国際エネルギー機関(IEA)は5月19日、新たな報告書「G7メンバーにおける重工業部門のネットゼロ達成」を発行。G7の各会合へのインプットのため、IEAの見解を表明した。2022年のG7議長国ドイツが作成を要請した。
同レポートは、IEAの「2050年ネット・ゼロ(2050NZE)」シナリオに基づき、重工業でのカーボンニュートラルの機会と課題を特定。主要な知見を整理したもの。重工業部門は3つの主要な課題を克服する必要があるとした。
まずひとつ目は、産業部門の移行に必要な多くの技術は、開発の初期段階にあり、まだ市場展開の準備ができていないという課題。
2つ目は、既存の技術よりも排出原単位が大幅に低い新しい生産プロセスは、少なくとも当初はコストが高くなるという課題。
3つ目は、重工業分野の製品は、競争の激しい市場で国際的に取引されているため、利幅が小さく、先発企業の意欲を削ぐことになるという課題。
同報告書は、鉄鋼とセメントを例に、これら供給側の課題克服のための方向性を提言している。まず、需要側では、鉄鋼やセメントをカーボンニュートラルに近い形で生産する場合、少なくとも当面は従来のプロセスで作られた材料よりも高価になるため、差別化された市場を創出するため、炭素差契約、公共調達ルール、義務、割当等の関連措置を、企業が活用することを提言した。
そして政府に関しては、明確なカーボンニュートラルに近い材料の基準値を政府が明確に示すべきとした。
今回のレポートは、5月27日に発表されたG7気候・エネルギー・環境相会合でも歓迎され、方向性が支持された模様。
【参考】【国際】G7、気候・エネルギー・環境相会合、気候変動と生物多様性で大きなコミット。日本政府は矛盾も(2022年5月29日)
【参照ページ】G7 members can lead the world in reducing emissions from heavy industry
【参照ページ】G7 Climate, Energy and Environment Ministers recognise IEA work on wide range of energy and climate issues
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