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【国際】G7、気候・エネルギー・環境相会合、気候変動と生物多様性で大きなコミット。日本政府は矛盾も

 G7は5月26日から27日、ベルリンで気候・エネルギー・環境相会合を開催。共同コミュニケを発表した。気候変動、生物多様性の喪失、汚染の3つを「世界的危機」と認識して深い懸念を表明。課題は、人間活動と持続可能な消費・生産パターンと認識した上で、即時 、短期、中期の行動にコミットし、長期的な変革のための情報を提供していくことにコミットした。

 気候変動では、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の最新報告書に言及し、2020年から2025年の間に世界の二酸化炭素排出量をピークアウトさせ、2019年比で2030年までに約43%減、2050年までに84%減させることが緊急と強調した。日本政府が2030年目標で設定している1990年比46%減は、2019年費では37%減にとどまっており、共同コミュニケに対し、コミットメントを大幅に満たせていない状態。今回の合意では、2022年のCOP27までに、2030年の目標引上げを求めていくとした。また、カーボンプライシングとカーボン市場の意義を強く強調した。

 その一環として、削減努力のない(Unabated)石炭火力発電の段階的廃止に向けた努力の加速、また国内の石炭火力発電所の段階的全廃に向けた具体的でスケジュールを定めた計画策定を含め、2035年までに電力セクター全体をかなりの程度カーボンニュートラル化することの目標にさらにコミットすることで合意した。加えて海外でも削減努力のない(Unabated)石炭火力発電を全廃に向けた支援にコミットすることも宣言した。

 日本政府が加盟している国際組織で、削減努力のない(Unabated)石炭火力発電の段階的廃止の期限が2035年と明確に設定されたのは初。但し、日本政府は、Unabatedの意味には、CCUSだけでなく、水素やアンモニアの燃料混焼も含まれると解釈することで、同コミットメントに遵守していると説明しようとしており、今回もその解釈で乗りきることができると楽観視している模様。

 加えて、今回G7は、2022年末までに、削減努力のない(Unabated)な化石燃料全般に対する新たな直接的公的支援を終了することにも宣言。これにより、石炭だけでなく、石油及びガスも対象となることが明確となった。ロシアのウクライナ戦争による化石燃料価格の高騰でも「一時的かつ的を絞った救済策を目指す」とし、2025年までに非効率な化石燃料補助金を廃止するというコミットメントは継続すると言明。補助金全廃に関し、2023年までに進捗報告を行うことを目指すとし、さらにアクションを強化する。ロシア産石油輸入を段階的に廃止または禁止することを含め、ロシアのエネルギーへの依存を段階的に解消することも約束した。

 再生可能エネルギーに関しては、「再生可能エネルギーに強く依存したカーボンニュートラルなエネルギー供給が、経済的に賢明であり、技術的に実現可 能で、信頼性と安全性が高いことを認め」るとし、大規模に拡大することで一致。2021年から2030年にかけ、再生可能エネルギーを世界中で促進するための送配電網統合も進めるとした。

 原子力発電に関しては、「原子力を利用することを選択した国は、自国のエネルギーミックスにおける原子力の役割を再確認した」とした。この文章からも、G7の中でも見解はわかれているともられる。今後10年以内に小型モジュール炉(SMR)を含む先進的な原子力技術が開発・導入されれば、世界中のより多くの国がエネルギーミックスの一部として原子力を採用することになるだろうと表明した。

 交通・輸送では、2030年までに道路部門を高度にカーボンニュートラル化することを約束。ゼロエミッションの公共交通導入、公共車両を含むゼロエミッションの自動車・バンの販売・シェアの大幅拡大、ディーゼル及びガソリン車の新規販売からの禁を加速させる。中型及び大型車でも、EV充電及びFCV燃料補給インフラへの多額の投資を行うとともに、バッテリーの再生も支援する。一方、今回の共同宣言では、ゼロエミッション車への手頃な価格でのアクセス及びサステナビリティが2030年までに全地域で実現することを目指す政府間イニシアチブ「“Accelerating the transition to zero emission cars and vans」の加盟国は、政策を加速させるととしたが、日本政府は加盟していない。

【参考】【国際】30ヶ国政府、世界中でのゼロエミッション車アクセス拡大で合意。新興国からも(2021年11月11日)

 また、製品に関しては、カーボンフットプリントが最小またはマイナスの製品の生産・導入が、カーボンニュートラルを達成するために重要とした。ライフサイクル全体でのカーボンフットプリントの概念を協調することで、「カーボン・リーケージ」問題に対処していけるとの考えも示した。

 不動産では、2050年までの不動産でのカーボンニュートラルを実現するため、既存の建物の性能基準や 新しい建物の設計基準の設定を促進し、改築にインセンティブを与えることを支持。さらに、土地利用、設計、建材、建設、解体等の建物のライフサイクル全体で、あらゆる種類の二酸化炭素排出量削減し、持続的に調達される建材に炭素を蓄積する建物の可能性も探るとした。

 二酸化炭素除去(CDR)については、喫緊の二酸化炭素排出量削減を代替することはできず、あくまで補完的な役割ということを確認。その上で、IPCCの分析では、21世紀中に100Gtから1,000GtのCDR活用を見込んでいることから、技術のスケールアップを加速することで協力するとした。社会や環境の悪影響も考慮する。

 国際開発機関(MDB)に対しては、気候変動の緩和と適応の双方で、ファイナンスを拡大するため、民間資金の戦略投資リスクを除去するための計画を2022年までに策定することを求めた。気候変動適応に向けたレジリエンス強化では、自然を軸としたソリューション(NbS)を拡大し、世界中で持続可能な水マネジメントへのアクションも大幅に強化すると宣言。

 生物多様性では、農業を大きくとりあげた。土地利用・土地利用変化・林業(LULUCF)、農業による生息地の喪失、持続不可能な農法は、生物多様性の損失、土地の劣化、気候変動、水不足の増加、汚染の主要な要因と言及。持続可能な土地管理を実施し、排出集約型の肥料・農薬、持続的に生産される排出削減型あるいは気候ニュートラル型に転換するための努力やモニタリングの改善を支援しつつ、生物多様性の保全・保護、農業、林業、その他の土地利用分野での自然の炭素貯留を強化し、排出量を削減することにコミットした。「気候のための農業イノベーション・ミッション」への投資も重要とした。 

 さらに、もののサプライチェーンでは、報告やトレーサビリティといった透明性の確保、OECD多国籍企業ガイドラインや国連ビジネスと人権に関する指導原則(UNGP)に沿った環境・人権デューディリジェンスの実施等、サプライチェーンのサステナビリティとレジリエンスの促進における民間セクターの重要な役割を強調し、その効果的な実施 を促進することにコミットした。

 サーキュラーエコノミーも大きく掲げた。まず、バリューチェーン全体で、資源効率とサーキュラーエコノミーを規範とすることは、2050年までのカーボンニュートラルと2030年までの生物多様性喪失回復までにとって重要との考えを提示。同時に、経済及びコミュニティの競争力とレジリエンスを強化できるとの考えを示した。耐久性と寿命延長のための製品設計、軽量化技術、持続可能な化学的アプローチ、省資源の向上、リサイクル性の向上、廃棄物の設計、食品ロス・食品廃棄物の削減等が必要とした。

 気候変動と生物多様性の双方では、ジャスト・トランジション(公正な移行)の重視も盛り込んだ。ジェンダーやLGBTQ+での平等、女性と女児のエンパワーメント、障害者のインクルージョン、世代間の正義と多様性の本質的な価値も強調した。

 これらアクションに関し、G7は、2023年に開催される未来サミットに向け、重要なマイルストーンも提示していく。

【参照ページ】G7 Climate, Energy and Environment Ministers’ Communiqué

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