国連生物多様性条約第15回締約国会議(CBD COP15)は12月19日、ポスト2020生物多様性枠組となる「昆明-モントリオール生物多様性枠組」を採択し、閉幕した。ポスト愛知目標となる目標も決定した。
CBD COP15は中国が議長国。昆明が開催地だったが、新型コロナウイルス・パンデミックの混乱で延期を重ねた。2021年に2回に分けて開催することが決定し、2021年10月にオンラインで第1回会合を実施。2022年4月には最終大詰めの第2回会合を昆明で開催予定だったが、中国国内での感染拡大で延期となり、最終的に開催場所をカナダのモントリオールに変更し、12月の開催で決着。ようやくポスト2020生物多様性枠組が決まった。
【参考】【国際】生物多様性条約、昆明会議を2分割し2022年4月に延期。第1部はオンラインで10月開催(2021年8月21日)
【参考】【国際】生物多様性条約締約国会議ハイレベル会合、昆明宣言を採択。金融機関のコミットも確認(2021年10月14日)
昆明-モントリオール生物多様性枠組は、国連生物多様性条約の締約国である政府に対し、義務や目標を設定している。そのため、それ以外のステークホルダーの遵守内容については、国が規制や政策を適切に整備していくことが掲げられている。
同枠組では、2050年ビジョンとして、「2050年までに、生物多様性が評価され、保全され、再生され、賢明に利用され、生態系サービスを維持し、健全な地球を維持し、すべての人々に不可欠な利益を提供する」を設定。その上で、2050年目標を定めた。
- 目標A:すべての生態系の完全性、連結性、回復力が維持、強化、または再生され、2050年までに自然生態系の面積が大幅に増加する。既知の絶滅危惧種の人為的な絶滅を阻止し、2050年までにすべての種の絶滅率とリスクを10分の1に減らし、在来野生種の生息数を健康でレジリエンスのあるレベルまで増加させる。野生種と家畜化された種の集団内の遺伝的多様性を維持し、その適応能力を保護する。
- 目標B:生物多様性を持続可能な形で利用・管理し、生態系の機能やサービスを含む自然が人間にもたらす貢献を評価、維持、強化し、現在衰退しているものは再生させ、2050年までに現在と将来の世代の利益のために持続可能な開発の達成を支援する。
- 目標C:遺伝資源、遺伝資源のデジタル配列情報及び遺伝資源に関連する伝統的知識の利用から得られる金銭的及び非金銭的利益を、必要に応じて先住民や地域社会と公平・公正に共有し、2050年までに大幅に増加させるとともに、遺伝資源に関連する伝統的知識を適切に保護し、国際的に合意されたアクセスと利益配分手段に従って、生物多様性の保全と持続可能な利用に貢献する。
- 目標D:昆明-モントリオール生物多様性枠組を完全に実施するための財源、能力開発、技術・科学協力、技術へのアクセスと移転を含わむ適切な実施手段を、すべての締約国、特に後発開発途上国、小島嶼開発国、および経済移行国が確保でき、年間7,000億米ドルという生物多様性資金ギャップを徐々に解消し、資金フローと昆明-モントリオール生物多様性枠組および2050年のビジョンとを一致させ、公平なアクセスを可能にする。
その上で、2030年までの「ポスト愛知目標」を定めた。目標は全部で23。特に目標15では、大企業や多国籍企業、金融機関に関する内容も3つ設定された。具体的には、事業、サプライチェーン、バリューチェーン、ポートフォリオに関し、生物多様性へのリスク、依存、影響を定期的に監視、評価し、透明性をもって開示すること。そして、持続可能な消費パターンを促進するために消費者に必要な情報を提供すること。さらに、生物の遺伝資源を活用する製薬企業を主な対象として、アクセスと利益配分の規制と措置の遵守状況を報告すること。
加えて、目標19では、2030年までに年間2,000億米ドル以上を世界全体で動員するため、民間資金の役割も明記。ブレンデッドファイナンスの促進、生態系サービスへの支払い、グリーンボンド、生物多様性オフセット・クレジット、環境社会セーフガード付き利益配分メカニズム等の革新的なスキームの促進や、インパクトファンド等を通じた民間セクターによる生物多様性への投資の促進が明記された。
それ以外には、2030年までに生物多様性の重要性の高い地域の喪失を限りなくゼロにすることや、陸上と水系の面積30%以上の保護化、劣化している陸上と水系の面積30%以上の再生、外来種の侵入度合いの半減等も盛り込まれた。
【参照ページ】Adoption of the “Kunming-Montreal Global Biodiversity Framework”(GBF)
【参照ページ】Nations Adopt Four Goals, 23 Targets for 2030 In Landmark UN Biodiversity Agreement
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