Skip navigation
サステナビリティ・
ESG金融のニュース
時価総額上位100社の96%が
Sustainable Japanに登録している。その理由は?

【日本】政府、「民間資金を中心とするJCMプロジェクトの組成ガイダンス」公表。企業側メリット薄い

 経済産業省、環境省、外務省は3月28日、二国間クレジット制度(JCM)を促進するため、民間事業者向けの「民間資金を中心とするJCMプロジェクトの組成ガイダンス」を公表した。今後は政府資金を前提としない民間資金のJCM創出にも力を入れる。

 JCMは現在、25カ国政府とのパートナーシップを締結し、200件以上のプロジェクトを組成してきた。しかしJCMは従来、政府資金の活用が前提となっていたため、補助金適正化法等の関係規定や実施スケジュール等が制約され、企業の二国間クレジットとしての活用は進んでこなかった経緯がある。

 今回のガイダンスは、事業実施に、環境省JCM設備補助事業や経産省NEDO実証事業等の政府資金を活用しないものを「民間JCMクレジット」と定義。2021年の国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)で決まった「パリ協定第6条実施ルール」を踏まえ、制度活用の手法やメリットを定義した。

 JCMはもともと京都議定書で、企業の排出削減ではなく、日本としての削減義務目標を達成するために考案された。そのため、JCMプロジェクトから創出されたクレジットは、日本と当該国の合同委員会で事前に配分割合を取極め、パートナー国政府、パートナー国側のプロジェクト参加者、日本政府、日本側のプロジェクト参加者等へと配分される。日本政府と日本側プロジェクト参加者の取り分は、プロジェクトへの日本側の資金負担割合等に応じて配分されるが、そのうち大半が日本政府の取り分となっている。このように、日本政府としては「日本政府」の取り分に関心があり、日本側のプロジェクト参加者への配分は二の次となっている。

 今回の民間JCMについては、日本政府の資金を使わないため、従来の考え方を踏襲すれば、日本政府への取り分は発生せず、日本側のプロジェクト参加者の取り分となる。しかし今回3省は、JCMのそもそもの趣旨に鑑み、取得したクレジットを日本政府の取り分として活用することに協力するよう要請した。具体的な協力手法としては、企業が保有するJCMを自主的に無効化し使えないようにすることや、地球温暖化対策推進法(温対法)での排出量算定・報告・公表制度(SHK制度)の報告時に使用した分を控除し、排出量を増やして報告すること等を挙げた。また、民間JCMプロジェクトの実施にあたって測定、報告及び検証(MRV)等やパートナー国政府との直接協議の設定等の日本国政府による支援を受ける場合は、日本政府の取り分が事前に設定される可能性があることも伝えた。

 今回のガイダンスによると、日本企業が民間JCMを活用した場合に、創出できるクレジットから日本政府取り分が控除される形となる。一方、日本企業は、CDP等での自社報告分については、民間JCMを活用する必要はなく、むしろ民間JCM以外のクレジットを活用したほうが、オフセットできる量が多くなる。日本政府は、民間JCMプロジェクトに道を開きたい考えだが、企業のメリットは多くない。日本政府が、パートナー国の関心を高め、積極的に案件を創出し、日本企業に機会を率先提示し、介在価値を示すことができれば、民間JCMの活用は進むかもしれない。

【参照ページ】民間資金を中心とするJCMプロジェクトの組成ガイダンス

author image

株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

この記事のタグ

Sustainable Japanの特長

Sustainable Japanは、サステナビリティ・ESGに関する
様々な情報収集を効率化できる専門メディアです。

  • 時価総額上位100社の96%が登録済
  • 業界第一人者が編集長
  • 7記事/日程度追加、合計11,000以上の記事を読める
  • 重要ニュースをウェビナーで分かりやすく解説※1
さらに詳しく ログインする

※1:重要ニュース解説ウェビナー「SJダイジェスト」。詳細はこちら

"【ランキング】2019年 ダボス会議「Global 100 Index: 世界で最も持続可能な企業100社」"を、お気に入りから削除しました。