英環境シンクタンクNGOプラネット・トラッカーは6月15日、アパレル産業の企業価値と気候変動への影響を分析した報告書を発表した。アパレル小売に対し、サプライチェーンへの積極的な関与を求めた。
今回の発表は、生地や繊維の製造、小売を含むアパレル産業のサプライチェーン全体に関わる67カ国3,897社を分析したもの。アパレル産業のサプライチェーンの中で、生地製造と繊維生産は、二酸化炭素排出量の76%、資源消費の74%、水利用の61%を占めているが、売上高は18%、時価総額は7%しかない。一方で、小売が占める割合は、売上高54%、時価総額63%であり、直接的な環境に与える影響は少ない。環境に悪影響を与えるプロセスと資本が集中する場所に大きな乖離があると報告した。
アパレル産業では製造プロセスでアウトソーシングが頻繁に実施されるため、サプライチェーンの可視化が難しく、小売企業や投資家が直接コントロールすることは難しいとした。一方で、EUの環境・人権デューデリジェンス指令案やグリーンウォッシングに関する規制であるグリーンクレーム指令案等による現状のサプライチェーン全体のリスクを指摘した。
【参考】【EU】欧州委員会、環境・人権デューデリジェンス指令案発表。非EU大企業も対象。立法審議へ(2022年2月25日) 【参考】【EU】欧州委、消費者環境訴求で科学的根拠義務化へ。環境スコアの勝手評価も禁止(2023年3月24日)
同報告書では、資本が集中しているアパレル小売企業に対して、環境改善がブランドのグリーン訴求への根拠となるため、サプライヤーと協力し持続可能なファッション業界の実現を求めた。プラネット・トラッカーの調査では、熱回収や水の再利用等の環境負荷削減を目的としたサプライチェーンへの投資は、平均45万米ドル(約6,300万円)の投資で年間コストを約37万米ドル(約5,200万円)のコスト削減につながり、約14ヶ月で投資回収できるとした。