国際エネルギー機関(IEA)とアフリカ開発銀行(AfDB)は7月26日、2030年までにクリーン調理(クッキング)へのアクセスを世界全ての人に確保するためのガイダンスを発表した。政治的な意思と年間80億米ドル(約1.2兆円)の投資のみで達成可能な目標と呼びかけた。
2022年時点で、世界の人口の約3分の1に当たる128カ国、23億人の人々が、調理時に木炭、薪、石炭、農業廃棄物等の燃料を利用しており、その過程で有害な煙を吸い込んでいる。そのため、年間370万人が大気汚染が原因で死亡しており、世界第3位の早死原因となっている。
また、燃料(薪等)収集と調理に、1日平均5時間が費やされており、特に女性が経済的な自立を目指した教育や雇用、事業を始めることができない要因にもなっている。燃料の薪や木炭の収集により毎年アイルランドと同じ面積の森林が失われ、二酸化炭素排出の原因にもなっている。
クリーン調理へのアクセスは、国連持続可能な開発目標(SDGs)の目標7「クリーンエネルギー」で掲げられているターゲットの一つ。国際再生可能エネルギー機関(IRENA)は6月、IEA、国連統計局(UNSD)、世界銀行、世界保健機関(WHO)と共同制作した報告書の中でも、クリーン調理を普及させることの重要性を指摘していた。
【参考】【国際】IRENA、IEA等、SDGs目標7「エネルギー」の進捗報告書を発表。アクション不足に警鐘(2023年6月9日)
今回の報告書では、コンロの無償提供やLPG(液化石油ガス)ボンベへの補助金等の政策により、中国、インド、インドネシアではクリーンな調理ができない人口が2010年からの10年間で半減したと報告。一方、サブサハラ・アフリカではクリーンな調理ができない人口が増加し続け、全人口の約5分の4に当たる10億人が従来型の燃料で調理をしており、現状の政策が継続された場合、2030年になってもクリーンな調理ができない人口は減少しないと警鐘を鳴らした。
具体的な解決策として、技術的なブレイクスルーは必要なく、既存の技術で解決できると提唱。LPGボンベや、危険な煙やガスの排出量を削減できる改良型調理用コンロの普及を提案。クリーンな調理器具とエネルギーへのアクセスを実現できれば、早死する人々の数は年間250万人減少し、調理に関連する家事の時間を1.5時間節約できるとした。二酸化炭素排出量は、現在の船舶、飛行機の二酸化炭素排出量と同等の年間15億t削減できるという。
必要なコストは2030年までに年間80億米ドル(約1.2兆円)と試算。公的資金による資金拠出が難しい国も多いため、譲許的ファイナンスが必要だとした。この金額は2022年のエネルギー価格高騰時に、各国政府がエネルギー価格を手頃な価格にするために支出した金額の1%以下であるとし、国際的な財政支援の必要性を訴えた。
【参照ページ】Low-cost solutions can give billions access to modern cooking by 2030, but the world is failing to deliver
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