
SOMPOホールディングスは6月14日、保険料調整行為に関する社外調査委員会による調査報告書を公表するとともに、業務改善計画の進捗状況を発表した。
【参考】【日本】金融庁、SOMPOに業務改善命令。ビッグモーター事案。業務停止命令は出さず(2024年1月27日)
今回の社内調査では、子会社の損害保険ジャパンの全191部店・室のうち、営業部門である125部店中、96部店で独占禁止法上の本件不適切行為が確認された。具体的には、入札談合、価格カルテル、市場分割カルテルがあった。営業部門中76.8%、全社部店・室中50%が不適切行為を行っていたという極めて異常な事態にあったことがわかった。
企業向け法人契約の保険料の売上ベース(団体扱保険除く)の不適切行為割合は、2018年が20.6%、2019年が19.8%、2020年が13.5%、2021年が14.5%、2022年が24.7%となっていた。契約での不適切行為の開始時期は古くは1968年に遡るものがあり、また本件不適切行為の対象となった法人数は385社あった。契約種目別では、賠責保険と火災保険が多い。団体扱保険では、調査対象となった2018年以降で、合計199団体が不適切行為に関与していた。
調査報告書では、発注者側から一者相差を避けるため入札参加が求められた場合にも、誤って落札することを避けたり、入札保険料を算定する手間を省いたりするために、他の損害保険会社に入札保険料等の情報提供を求め、落札する意思のある損害保険会社がこれに応じるというケースもみられた。保険代理店が、入札実施に向けた損害保険会社の調整を積極的に取り仕切ったり、落札予定者を割り振ったりするケースもみられた。背景には、競争により保険料が下がれば、保険代理店の手数料収入も減るという事情があったとみられる。
調査報告書では、不適切行為が蔓延していた背景の一つとして、損害保険会社各社での共同保険が組成できなければ、顧客が無保険の状況に陥りかねず、顧客のために安定的な保険提供を行う意図で情報交換を行っていたということもわかった。しかし同報告書は、共同保険は、保険契約者が抱えている諸々のリスクを各損害保険会社で引き受ける以上、共同保険の組成は、保険契約者と各保険会社との間で行わるべきものであり、損害保険会社間で協議・調整する理由とはならないと断じた。また、損害保険大手4社以外にも、海外の損害保険会社を含む他の損害保険会社があることや、補償条件の変更、再保険の活用、サブスクリプション方式の採用等による代替手段もあることから、共同保険が組成できないことで顧客が無保険になるという誤った認識が問題とした。
さらに、顧客に意向に基づいて競合各社が協議する場合には、違法性に関する法的な見解は分かれるとしつつも、同報告書では、競争法上の懸念がある以上、控えるべきものと言及した。
業務改善計画の進捗状況に関する発表では、行動規範等の見直し、人事評価の見直し、対応ルールの策定等、外形的な内容が目立つ。グループCEOの奥村幹夫代表取締役社長は「130年を超える歴史の中で染み付いた誤った常識や前例踏襲から脱却し、新しいビジネスモデルと企業文化を作り上げてまいります」とコメントしている。
今回の調査報告書では、同社以外の大手3社を含む慣習や、保険代理店での悪習まで明らかになっており、今後、損害保険業界全体に議論が発展していく可能性がある。価格カルテルに関しては、すでに損保大手4社に対し、業務改善命令が出ている。
【参考】【日本】金融庁、損保大手4社に業務改善命令。自然災害増加契機に料率調整等。競争法違反(2023年12月28日)
【参照ページ】業務改善計画の進捗状況および保険料調整行為に関する社外調査委員会による調査報告書の受領について
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