金融庁は12月26日、東京海上ホールディングス傘下の東京海上日動火災保険、MS&ADインシュアランスグループホールディングス傘下のあいおいニッセイ同和損害保険と三井住友海上火災保険、SOMPOホールディングス傘下の損害保険ジャパンの4社に対し、競争法違反で業務改善命令を発出した。
今回の処分は、独占禁止法に抵触すると考えられる行為及び同法の趣旨に照らして不適切な行為が認められたため。具体的には、保険料理率等の調整、契約条件の他社との調整、保険代理店からの保険料調整打診に対する受諾等が確認された。少なくとも4社のうち1社の保険会社で不適切行為等が確認された保険契約者が576先あった。
金融庁は、当該事案の背景について、2000年代以降に、損害保険会社の合併により大手社の数が減少し、限られた営業担当者同士がコミュニケーションを取る機会が増加した中で、2010年代後半からは、自然災害の頻発・激甚化等により、損害保険業界全体として、火災保険の大幅な赤字が常態化。そのため、損害保険大手各社が、保険料収入(トップライン)から利益(ボトムライン)重視に舵を切るまたはボトムラインを向上させる取組みをより強化した結果、保険契約の更改にあたって、特に保険料の値上げや補償内容の縮小等、保険契約者と利害が対立しやすい交渉が行われる機会が増加してきたことが考えられるとした。
金融庁の調査では、不適切行為等のうち33%は違法又は不適切と認識しながら行われており、また、67%は担当者が不適切という認識がないか、問題ないと認識していたこともわかった。前任者からの引き継ぎに基づくものも41%あった。さらに、課長からの指示が2%、課長が当該行為を認識していたものが35%、部長も認識していたものが6%あり、担当者レベルの事案にとどまらないものも多数あった。
今回の業務改善命令では、経営責任の所在の明確化、追加調査の実施、不適切な行為のインセンティブとならない営業目標の策定やリスクに応じ適正な保険料を提示できる営業活動を実現するための方策の策定を含む再発防止策の実施、コンプライアンス態勢の確立、風土情勢等を命じた。2024年2月29日までに金融庁に報告することが求められる。
さらに、今回業務改善命令に至った理由として、監査役監査でも今回の事案を確認していなかったことや、コンプライアンス・リスク管理体制が十分に機能していなかった責任も挙げ、自主的な対策ではなく、金融庁が改善に関与する必要があると判断したと説明した。
【参照ページ】大手損害保険会社に対する行政処分について
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