
欧州委員会は8月1日、EU競争法に関し、優越的地位の濫用のうち排除型濫用に関するガイドライン案を発表した。10月31日までパブリックコメントを募集する。2025年中に最終決定する予定。
EU競争法に相当する欧州連合機能条約(TFEU)第102条では、支配的企業が濫用的行為に関与することを禁止しており、その中で、競争相手を市場から排除する行為も禁止されている。当該行為には、略奪的価格設定、マージン搾取、独占的取引、供給拒否等が含まれる。
欧州委員会は2008年、「欧州委員会の執行優先事項に関するガイダンス」を発行し、排除型濫用に関する執行優先事項を特定。市場力学の分析を通じ、濫用的行為の疑いによる潜在的な影響に焦点を当てたアプローチ「影響に基づくアプローチ」を打ち出した。2008年ガイダンスの採択以来、欧州司法裁判所は排除型濫用関連で34件の判決を下している。
EUでは、欧州司法裁判所の判例を踏まえ、規制のある程度の骨格は明確になったと考えているが、排除型濫用の分野では、EU競争法の中で唯一、適用ガイドラインが策定されていない。そのため、欧州委員会は2023年3月、排除型濫用に関するガイドラインの採択について意見を募集したところ、策定を求める声が多かった。
今回示したガイドライン案では、重要事項に関する指針を策定している。主な内容は、まず、EU競争法の執行目的として消費者福祉の概念を確認。その上で、単独支配及び集団支配の評価に適用される主な原則を整理した。支配的企業による行為が、濫用に該当する可能性が高いかを判断するための一般原則の適用や、特に「実力競争」と「排除的効果」の概念についても提示している。
行為が排除的効果をもたらす可能性があることを示すために必要な証拠に関しては、特に、「排除的効果を生み出す能力を証明する必要がある行為のカテゴリー」「排除的効果につながる可能性が高い行為のカテゴリー」「その性質上、排除的効果につながる「あからさまな制限(naked restrictions)」の特定について要件を示した。
他には、排除的効果をもたらす行為の能力を立証するための実体的な法的基準、支配的企業による特定の種類の行為に適用される分析的枠組み、支配的企業が主張しうる客観的正当性の評価に適用される一般原則についても記載されている。
【参照ページ】Commission seeks feedback on draft antitrust Guidelines on exclusionary abuses
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