
資源世界大手豪BHPは10月16日、製鉄のカーボンニュートラル化に向けたパスウェイを公表した。同社にとっての製品使用でのスコープ3について自らの目標を設定した。
同社は今回、2030年までに業界全体で従来の溶鉱炉製鉄法比で温室効果ガス排出原単位を30%削減できる製鉄技術を開発することを目標として掲げた。すでに世界の鉄鋼生産量の約22%を占める鉄鋼メーカー11社と協働を進めている。
原単位排出量の大幅削減には、現在世界の鉄鋼生産量の70%を占める高炉製鉄法からの転換が鍵。そのため同社は、電炉の活用や、炭素回収等による高炉の排出削減への共同投資を行っている。同社の気候変動対策計画(CTAP)2024の仮定に基づくと、2020年度から2029年度までのBHPとパートナー企業からの資金拠出総額4.2億米ドル(約645億円)となる見込み。
気候変動対策計画(CTAP)2024では、2030年までに従来の高炉製鉄での温室効果ガス排出量を、30%削減できる技術の開発を支援するという中期目標を標榜。また、2050年までにはスコープ3でのカーボンニュートラル達成を長期目標としている。
今後の見通しとしては、世界でのカーボンニュートラル化、都市化の進展、人口増加、エネルギー転換インフラ需要の充足のためには、ニアゼロエミッションでの鉄鋼製造技術を広く展開する必要があると分析。ニアゼロエミッションの鉄鋼は現在、電炉でスクラップから製造可能だが、スクラップの入手可能性がネックとなるため、鉄鉱石ベースの鉄鋼生産が引き続き重要な役割を果たすと予測した。
また、世界の鉄鋼生産の約70%を占める高炉による鉄鋼一貫製造は、エネルギー効率が向上してきたものの、依然として温室効果ガス排出量が高いと指摘。同製造手法が広範に展開していることや、中国やインド等の高炉設備の若さを踏まえ、可能な限り高炉プロセスでの排出量削減を進めることが、カーボンニュートラルに向けたロードマップでなければならないと説明した。
同社のパスウェイでは、十分な柔軟性、拡張性、効率性を備え、ニアゼロエミッションの鉄鋼製造の実現可能なものとする可能性がある4つのプロセスルートとして「高炉」「直接還元鉄(DRI)電気アーク炉(EAF)」「直接還元鉄(DRI)電気製錬炉(ESF)」「電解精製」を想定。将来的なそれぞれの鉄1tあたりの排出原単位は、高炉で2.2から0.4に、直接還元鉄(DRI)電気アーク炉(EAF)で1.0から0.3に、直接還元鉄(DRI)電気製錬炉(ESF)で1.2から0.4に、電解精製で2.6から0.1以下になると推測した。

その上で、現実的なパスウェイは、既存の高炉設備へのCCUS導入と、EAFやESF等の段階的な導入の組み合わせになる可能性が高いと分析。現時点で広範な商業利用の準備ができているニアゼロエミッション技術がないため、技術の進歩が必要な他、政府の政策や規制、既存インフラの耐用年数、鉄鉱石とスクラップ、電力、還元剤燃料源の入手可能性とコストがパスウェイに影響を与えると説明した。
同社は今後、鉄鋼製造のカーボンニュートラル化に向け4つ全てのプロセスの研究開発を支援。投資を行う他、パートナー企業との協働でCCUSやDRI等による排出量削減プロジェクトを進めていく。
【参照ページ】Pathways towards steelmaking decarbonisation
【画像】BHP
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