
10月に開催された国連生物多様性条約第16回カリ締約国会議(CBD COP16)で創設が採択された「カリ基金」には、世界1,900社で、合計3,300億円の資金拠出を求める案が盛り込まれている。
【参考】【国際】CBD COP16、時間切れで後日再開へ。カリ基金創設、遺伝子組換え生物リスク評価等で大きな進展(2024年11月3日)
カリ基金は、発展途上国の生物多様性・生態系を保全・再生させるために、遺伝的資源としてのデジタル配列情報(DSI)から利益を得る企業から資金を徴収し、分配するという枠組みとなっている。CBD COP16で採択された合意文書には、資金徴収の対象となる業種や企業規模が案として提示されており、2026年にアルメニアで開催されるCBD COP17に向けて、加盟国間で交渉がなされることとなっている。
まず、対象業種として示されているのは、医薬品、栄養補助食品(食品および健康補助食品)、化粧品、動植物育種、バイオテクノロジー、試薬及び消耗品を含む遺伝資源に関するデジタル配列情報の配列決定及び使用に関連する実験機器、AIを含む遺伝資源のデジタル配列情報に関連する情報・科学・技術サービスの7つ。
対象規模として示されているのは、過去3年間の財務諸表で、総資産2,000万米ドル(約30億円)以上、売上高5,000万米ドル(約75億円)以上、利益500万米ドル(約7.5億円)以上のうち2つ以上を満たす企業。拠出「すべき」とされている金額は、年間売上の0.1%もしくは利益の1%。ここでは「すべき」となっており、義務とはなっていないが、各加盟国が域内企業にどのように強制するかは、加盟国政府の判断に委ねられているともいえる。
また案では、CBD COP17において、「中小企業及び大企業を特定するための国内基準及び国際基準、また歳入創出及び経済競争力への影響を含めた拠出率に関する委託研究を踏まえ、閾値及び拠出率を定め、その後も定期的に見直しを行う」と記載されている。
英環境シンクタンクのプラネット・トラッカーは11月26日、上記の基準に該当する企業は、国連生物多様性条約に加盟していない唯一の国連加盟国・米国を除くと、58カ国約1,900社となると発表。さらに案として掲げられている拠出率を適用すると、売上0.1%適用で22億米ドル(約3300億円)、利益1%適用で21億米ドル(約3150億円)の拠出額となるとした。地域比率では、OECD加盟国の企業が70%、その他が30%となる。基金の目標額は、今後10年間で年間9億米ドルから11億米ドルと設定されており、2026年までに40%を達成することがマイルストーンとなっている。
プラネット・トラッカーが計算したところ、拠出額トップ10には、利益ベースと売上ベースのいずれでも、CXIヘルスケア、ノバルティス、ロシュ、サノフィ、シーメンス、ユニリーバの6社が入る。加えて、利益ベースだとBioNTech、グラクソ・スミスクライン(GSK)、ロレアル、ノボノルディスクの4社が、売上ベースだとアストラゼネカ、バイエル、日立製作所、ミデア・グループ(美的集団)の4社が入る。
プラネット・トラッカーは今回、企業経営者、機関投資家・金融機関の双方に対し、カリ基金交渉に留意するよう促した。最終合意は2026年に予定されており、何も決まっていないものの、すでに案として叩き台が提示されている状況にある。
【参照ページ】Could corporates end up paying USD 2bn for genetic data?
【参照ページ】Draft decision submitted by the President
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