
英国財務報告評議会(FRC)は6月3日、現行の英国スチュワードシップ・コード「英国スチュワードシップ・コード2020」を改訂し、「英国スチュワードシップ・コード2026」を発行した。2026年1月1日から適用される。英国は、スチュワードシップ・コードを作成した世界初の国で、動向が世界的に注目されている。
【参考】【イギリス】FRC、英国スチュワードシップ・コード2020発表。気候変動考慮を明記。年次報告も(2019年10月29日)
【参考】【イギリス】FRC、英国スチュワードシップ・コードの報告義務内容を即時改訂。本編改訂にも着手(2024年7月23日)
今回の改訂では、2020年版では細則主義寄りの方針が採用され、スチュワードシップ・コードの内容が拡充されたが、今回の改訂では原則主義に立ち戻り、内容が大幅に簡素化された。また、報告についても負担を軽減するために、報告義務頻度も緩和された。
まず、アセットオーナー及び運用会社向けの原則では、2020年版では12原則だったが、2026年版では統廃合され、「スチュワードシップと投資への統合」「正常に機能している市場の促進」「エンゲージメント」「権利行使と責任」「運用会社の選定と監督」「サービスプロバイダーのモニタリング」6原則へと半減。その上で別途、アセットオーナー及び運用会社向けの開示事項として「組織、投資信念、スチュワードシップ・アプローチ」「ガバナンスとリソース」「方針、プロセス、レビュー」「利益相反」「クライアント/受益者との対話」の5つが新たに独立して設定された。
英国スチュワードシップ・コード2026
アセットオーナーと運用会社の開示
- Describe your organisation, your investment beliefs, your clients or beneficiaries and how
that informs your approach to stewardship.
- Describe how your resources enable effective stewardship.
- Describe your stewardship policies and processes, and how you review them.
- Describe how you manage stewardship-related conflicts of interest to put the best interests
of clients and beneficiaries first.
- Describe how you maintain a dialogue with clients and/or beneficiaries.
アセットオーナーと運用会社向け原則
- 原則1:Signatories integrate stewardship and investment to deliver long-term sustainable value for their clients and beneficiaries.
- 原則2:Signatories identify and respond to market-wide and systemic risks to promote wellfunctioning financial markets.
- 原則3:Signatories engage to maintain or enhance the value of assets.
- 原則4:Signatories actively exercise their rights and responsibilities.
- 原則5:Signatories integrate stewardship considerations into their selection and oversight of
external managers.
- 原則6:Signatories monitor and hold to account stewardship service providers.
また、スチュワードシップの定義についても、2020年版では「クライアント/受益者にとっての長期的な価値創造を目的として、資本の責任ある配分、管理、監督を行うことで、経済、環境、社会に持続可能な利益をもたらすこと」としていたが、2026年版では「クライアント/受益者にとっての長期的な価値創造を目的として、資本の責任ある配分、管理、監督を行うこと」と短くなった。
そして、2020年版の投資アプローチに関する原則で明記されていた「ESG」や「気候変動」を削除。代わりに、全体アプローチに関する説明の中で「気候変動を含めた環境・社会課題」「ダイバーシティ、報酬、労働者の利害」等を、署名機関が考慮する対象の選択肢として例示しており、「クライアント/受益者にとっての長期的な価値創造」の内容を署名機関が各自で検討する内容に改められた。
エンゲージメントについては、個別エンゲージメントと集団的エンゲージメントの双方を重視することが明記されていたが、こちらも原則レベルへと簡素化。そのうえで、実践例を開示することが追記され、報告を通じて機関投資家の間で相互学習できるようにすることが重視された。
一方、サービスプロバイダーのモニタリングについては、2020年版では抽象的な内容だったが、2026年版では、議決権行使助言会社、投資コンサルタント、エンゲージメント・サービスプロバイダーの3つが名指しされ、当該委託先企業へのモニタリングが必須となった。
報告義務の構造も刷新された。まず、報告の内容を、各原則及び開示事項に関する方針レベルやガバナンス等についての「方針・コンテキスト報告」と、実際の活動内容や成果・インパクトについての「活動・アウトカム報告」の2つに分離。「方針・コンテキスト報告」は4年に一度、「活動・アウトカム報告」は毎年の報告が必須となった。また、インハウス運用が中心の場合には原則1から6全ての報告が必要だが、外部運用が中心の場合には、原則3と4の報告は任意となった。
サービスプロバイダー向けのコードも同様に、開示事項として「組織・サービス」「ガバナンス・リソース」「方針、プロセス、レビュー」「利益相反」が独立して設けられ、原則の数は、2020年版の6つから「クライアントとのコミュニケーション」「議決権行使助言サービス」「投資コンサルタント・サービス」「エンゲージメント・プロバイダー・サービス」の4つに減少したが、議決権行使助言会社、投資コンサルタント、エンゲージメント・サービスプロバイダーの3つについては遵守する内容が明確になった。
同コードは、2026年1月1日に適用されるが、2026年は移行期間と位置づけられている。2026年版に基づく報告書の提出は、申請時期が2回設けられており、第1回目が運用会社とサービスプロバイダーは2026年4月30日が期限で、アセットオーナーは5月31日が期限。第2回目は全てを対象に2026年10月31日が期限。いずれのタイミングで申請してもよい。移行期間となる2026年中は、2020年版で署名している機関は、2026年末まで署名機関として扱われる。
【参照ページ】FRC overhauls the Investor Stewardship Code to focus on value creation, reducing burdens and enhanced engagement between market participants
【参照ページ】UK Stewardship Code 2026 Guidance
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