
EU上院の役割を担うEU加盟国閣僚級のEU理事会は5月27日、ネットゼロ産業法案と改正エコデザイン規則案を可決。双方のEU法案はすでに欧州議会を通過しており、成立した。
【参考】【EU】EU理事会と欧州議会、改正エコデザイン規則案で政治的合意。デジタル製品パスポート等(2023年12月10日)
【参考】【EU】EU理事会と欧州議会、ネットゼロ産業法案で政治的合意。戦略的技術のEU域内生産40%を法定目標(2024年2月8日)
ネットゼロ産業法は、米国でインフレ抑制法が制定されたことを受け、欧州委員会が2023年3月に、欧州での産業転換を加速するために打ち出したもの。同EU規則は、官報掲載日に発効する。
同法は、カーボンニュートラル技術のEU統一リスト「戦略的ネットゼロ技術」を作成。リスト入りした技術分野での政策を法定化する。具体的には、太陽光発電パネル、風力発電タービン、バッテリー、ヒートポンプ等の製品の生産能力の世界シェアを2030年までに40%以上、2040年までに世界の生産シェア15%以上を定めた。加えて、二酸化炭素回収・貯留(CCS)でも、2030年までに年間5,000万t以上の注入能力を達成する目標も掲げた。
同目標を達成するため、関連技術分野の戦略的プロジェクトの許認可手続を簡素化。公共調達や再生可能エネルギー導入オークション等を促進し、市場参入を後押しする。加えて、人材面では「ネットゼロ産業アカデミー」等を創設し、スキル向上による労働力確保を進める。産業地帯全体でのカーボンニュートラル化を進めるため「ネットゼロ産業バレー」構想の創設も盛り込んだ。「規制のサンドボックス」制度も導入する。
改正エコデザイン規則では、現行法の省エネ・省資源だけでなく、耐久性、再利用可能性、リサイクル可能性、改修可能性、修理可能性、メンテンナンスの容易性を含み、サーキュラーエコノミー全般を意識したものとなっている。官報掲載の20日後に発効され、発効から24ヶ月後に適用される。
エコデザイン規則の改正では、現行法の製品対象を大きく拡大し、ほぼすべての家電、車載部品、電子機器、家具、住宅設備、アパレル製品、化学製品等に適用される内容となっている。但し、自動車に関しては、別法で規定するため、同規則からは除外した。また国家安全保障に影響を及ぼす製品も条約に従って対象外となる。
「デジタル製品パスポート(DPP)」も導入される。製品の環境サステナビリティ関する情報を、原材料採掘から最終製品、さらには最終製品のリサイクルまで、情報をトラッキングできるようにする。EU加盟国は公共調達契約においても、環境サステナビリティに関する要件を課すことができる。具体的な情報流通要件は、欧州委員会が今後策定し、策定の18ヶ月後に適用される。
エコデザイン基準は、公共調達でのグリーン製品購入にも適用される。加えて、新規則は、売れ残りアパレル製品の廃棄を禁止(但し、中小企業は当面免除)。欧州委員会は今後、他の製品についても同様の禁止措置を導入する権限を与えられている。オンラインで販売される製品に関しては、デジタルサービス法(DSA)と整合し、今後導入されていく見込み。
【参照ページ】Industrial policy: Council gives final approval to the net-zero industry act
【参照ページ】Green transition: Council gives its final approval to the ecodesign regulation
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