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EU上院の役割を担うEU加盟国閣僚級のEU理事会とEU下院の役割を担う欧州議会は2月6日、ネットゼロ産業法案で政治的合意に達した。今後、双方での立法手続に入る。
ネットゼロ産業法は、米国でインフレ抑制法が制定されたことを受け、欧州委員会が3月に、欧州での産業転換を加速するために打ち出したもの。
【参考】【EU】欧州委、ネットゼロ産業法と重要原材料規則を制定へ。域内生産やリサイクル強化(2023年3月17日)
同法案では、カーボンニュートラル技術のEU統一リスト「戦略的ネットゼロ技術」を作成。リスト入りした技術分野での政策を法定化する。具体的には、EU需要を満たすのに必要なEU域内生産量を40%以上に設定。太陽光発電パネル、風力発電タービン、バッテリー、ヒートポンプ等の製品では、世界の生産量に比例したEU域内生産量も実現する。加えて、二酸化炭素回収・貯留(CCS)でも、2030年までに年間5,000万t以上の注入能力を達成することを目標として掲げた。ただし、各EU加盟国には、異なるエネルギーミックスを選択する権利があるため、自国のエネルギーミックスの一部として受け入れられていない技術に関連するプロジェクトを戦略的技術に指定する義務はない。
同目標を達成するため、戦略的ネットゼロ技術に関する「戦略的プロジェクト」については、許認可手続を簡素化。投資要件を緩和する。人材面では「ネットゼロ産業アカデミー」を創設し、スキル向上による労働力確保を進める。
さらに今回の政治的合意では、欧州委員会の原案に対し大幅に修正が入った。まず、産業地帯全体でのカーボンニュートラル化を進めるため「ネットゼロ産業バレー」構想の創設を盛り込んだ。特定の技術に関連する複数の企業が集中する地域を開発し、産業活動のクラスターを形成。製造活動の拠点としてのEUの魅力を高め、地域の再工業化を進める。
次に、戦略的技術製品の開発を促進するための公共調達活用では、EU加盟国当局の柔軟性を十分確保しつつ、要求事項の透明性、実施可能性、調和をより確実にし、EUへのこれらの技術の供給を多様化することを目的として掲げた。ただし、公共調達には、全ての技術分野で環境サステナビリティ要件を適用。加えて、当該技術の第三国依存度が50%を超える場合には、レジリエンス貢献要件も適用される。例外的に、不釣り合いな追加コストが発生する場合や、適切な入札や要請が提出されなかった場合には、当該要件をEU加盟国の判断で免除できる。
3つ目は、1GW以上の生産能力を誇る大規模なプラントや、その他の製造ラインの建設または拡張のための許可証交付の期限を最長18ヶ月に設定。1GW未満の小規模プラントの場合、さらに期限が短く、許可証の交付期限は12ヶ月となる。戦略的プロジェクトとみなされると、これよりも短い期限が設定される。また許認可手続では、安全・安心、環境サステナビリティ、社会に関する要件を満たすことも義務付けられる。
4つ目は、各EU加盟国が再生可能エネルギー導入オークションを制度化する場合、環境サステナビリティ、イノベーションへの貢献、エネルギーシステムの統合等の価格とは関係のない要件を、事前資格審査基準及び落札基準の双方に適用することをルール化。同基準は、EU加盟国毎に、毎年オークションにかけられる量の30%以上に適用されなければならない。同基準は今後レビューも行われる。
【参照ページ】Net-Zero Industry Act: Council and Parliament strike a deal to boost EU’s green industry
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