
中国全国人民代表大会(全人代)常務委員会は11月8日、中国初の包括的なエネルギー基本法「エネルギー法」を制定した。2025年1月1日から施行される。
同法は、中国のエネルギー開発のための主要政策、基本原則、重要制度を包括的に規定。エネルギー安全保障の確保、エネルギー部門のグリーン化の加速、新エネルギーシステムの計画と建設の加速を目的としている。
同法では、「エネルギー」の定義として、石炭、石油、天然ガス、原子力、水力、風力、太陽光、バイオマス、地熱、海洋エネルギー、電気、熱、水素エネルギー等、直接利用できるもの、または加工・転換して利用できるものを含め、あらゆる種類の資源を指すと定義した。
同法には3つの柱があり、1つ目は、エネルギーの質の高い発展のための長期的な保証メカニズムの整備。まず、管理指標を従来の「エネルギー総消費量」と「エネルギー原単位消費量」の2本立てから、「温室効果ガス総排出量」と「エネルギー原単位消費量」に転換。その上で、国務院国家能源局に対し、エネルギー消費における再生可能エネルギーの割合に関する最低目標を策定し管理する義務を課した。また、発電企業、小売電力企業、関連電力利用者、および自家発電所から供給される電力を使用する企業は、国の関連規定に従い、再生可能エネルギー電力を消費する責任を負うと明記した。
2つ目が、エネルギー分野における共通の法制度の整備。従来の電力法、石炭法、再生可能エネルギー法等の個別の法律を調整するため、上流、中流、下流、生産、供給、貯蔵、販売等、各種エネルギーのサプライチェーンをカバーする包括的なエネルギー関連の法関係を明確にした。
3つ目が、エネルギー法の制定及び改正を包括的に指導する体制の整備。一つの法律で全体をカバーすることで、改正を迅速に進められるにようにした。
エネルギー計画に関しては、大局的な観点から、国家能源局が、全体の「国家総合エネルギー計画」を策定することとなった。さらに、国家総合エネルギー計画に基づき、国家能源局が国家部門別エネルギー計画と地域エネルギー計画を策定。それに基づき、省、自治区、直轄市が各自のエネルギー計画を策定する。また、それぞれのレベルのエネルギー計画の策定では、科学的根拠を重視し、関連部門、関連企業、業界団体、関連専門家から意見を徴収することも義務付けた。
エネルギー法が掲げるエネルギー部門のグリーン化の加速では、中国政府が掲げる温室効果ガス排出量のピークアウトと、カーボンニュートラルの実現の2つを具体的に実施するための枠組みを規定した。まず、国家能源局に対し、非化石エネルギーの開発と利用の中長期目標を策定する義務を課した。次に、これまで「中国共産党中央委員会と国務院の意見」として発出されていた非化石エネルギー割合を2030年までに約25%、2060年までに80%以上にすることを法律として明記。
各エネルギー源に関しては、小規模水力発電を含む再生可能エネルギー全般の開発加速を明記。原子力発電については、国家能源局が、全国的な原子力開発と配置を調整し、職務に従って原子力発電所の計画、立地選定、設計、建設、運営の管理と監督を強化するとした。水素についても開発と利用を促進する。
化石燃料では、石炭火力発電を、調整電源としての役割への移行を進めつつ、高効率化を促進。石炭の開発と消費も最適化するとした。一方、石油と天然ガスの探査及び開発は陸上と海上の双方で強化。シェールガス、炭層メタンガス、タイトオイル、タイトガスの大規模開発も奨励した。同時に、石油及び天然ガスに代わる新たな燃料や工業用原材料の合理的な開発及び利用を支援するとした。
送配電では、電源と送電網の協調的な建設を強化し、送電網インフラのインテリジェント化とインテリジェントなマイクログリッドの建設を推進。送電網の再生可能エネルギーの受入、配分、調整能力を向上させる。さらに、エネルギー関連の全ての関係者に対し、生態系・環境保護、労働安全関連法の遵守、汚染物質及び温室効果ガス排出量の削減等を義務付けた。
再生可能エネルギーの需要側では、再生可能エネルギー消費の最低割合目標制度と、再生可能エネルギー電力消費保証メカニズムの整備も法律レベルに格上げした。同国で唯一の再生可能エネルギー電源証明書となっている「再生可能エネルギグリーン電力証書」の存在も同法で明記し、法律レベルに格上げした。
さらに、公共機関に対し、再生可能エネルギー等のクリーンで低炭素なエネルギー源、及び省エネ製品やサービスの調達と利用を優先すべきと規定。エネルギー需要家に対しても、省エネ努力義務を課すとともに、すべての関係者に対し、再生可能エネルギー消費に積極的に参加し、グリーンで低炭素な生産とライフスタイルの形成を促進すべきとした。ニュースメディアに対しても、省エネ、エネルギー安全保障、グリーンかつ低炭素なエネルギー開発に関する公益的な宣伝を行う義務を課した。
エネルギー・イノベーションにも単独で章を設けた。国家の戦略的科学技術能力がイノベーションを主導しつつ、イノベーションの主体は企業とし、市場を志向し、生産・学習・研究を深く融合させたエネルギー技術革新システムの構築を国が推進するとした。
【参照ページ】中华人民共和国能源法
【参照ページ】国家能源局有关负责同志就《中华人民共和国能源法》答记者问(上)
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