
農林水産省は3月14日、現状4.5万t程度のコメの輸出を2030年に35万tにまで拡大する目標を発表した。国内のコメの年間需要量が毎年10万t減少していく中で、輸出市場を視野に入れ、国内での生産量を確保する。
日本の国内でのコメ需要は、2015年度の783万tから、2023年度の691万tまで、毎年ほぼ10万t減少。背景には人国減少やと国民一人当たりの炭水化物の摂取量の減少があり、現状ではコメからパン類への変化ではなく、炭水化物の摂取量そのものが減少する中で、コメが特に減少しているという傾向にある。
年代別には、米飯類の一人当たりの摂取は、60代以上の層で顕著に減少している。背景には、調理時間の削減の中で加工食品を食べることや、玄米・雑穀等の健康志向のご飯にシフトする動きがみられる。一方、20代、40代、50代では2023年度には大きく回復し、一部コメへの回帰もみられる。
その一方、海外の日本食レストランの店舗数は増加傾向にあり、日本産米の海外需要も年々高まってきている。コメの輸出は、2014年の約4,500tから2024年には45,000tへと10倍にも増加。輸出額も120億円程度まで増えてきた。輸出先は、2019年にはアジア向けが72%だったが、2024年には55%へと減少し、北米が12ポイント増の25%に伸長。欧米での需要も伸びてきている。
2024年の輸出では、コメとコメ加工品全体の輸出量が67,923tで(金額は636億円)で、そのうちコメが45,112t(金額で120億篇)と全体の3分の2を占める。残りは、パックご飯、米菓、米粉、日本酒等がある。2024年の輸出量は、コメで前年比21%なのに対し、パックご飯で44%増、米粉でも22%増を記録し、伸びが大きい。
農林水産省は今回、2030年までに35万tのコメ輸出目標について、価格競争力を強化できなければ、「実現は難しい」との認識を示した。価格競争力の確保のためには、今の為替水準で(生産コストを60kg当たり)9,500円程度が目安とした。価格競争力確保に向けては、2022年4月に農業経営基盤強化促進法が改正され、市町村は、農地の集約等を積極的に進めることが義務化された。具体的には、地域農業の将来の在り方を示した従来の「人・農地プラン」ではなく、目標地図までを含めた「地域計画」を策定することとなっている。
2月に発表した備蓄米の放出では、買戻し条件付売渡しの入札を実施した結果、JA全農(全国農業協同組合連合会)等の7事業者に対し、141,796tが落札。落札率は94.2%となった。落札価格は60kg当たり21,217円。
但し、備蓄米は東北や北陸に集中しており、今回の落札米が、全国に均等に流通するわけではない。農林水産省は局長通知を出し、落札者に「できる限り配慮して」地域に分散流通させるよう要請しているが、そうならない可能性も少なくない。
【参考】【日本】農水省、政府備蓄米21万トン放出へ。3月中旬に引渡し。需給逼迫解消に苦悩(2025年2月14日)
【参照ページ】政府備蓄米の買戻し条件付売渡しの入札結果の概要について
【参照ページ】江藤農林水産大臣記者会見概要
【参照ページ】食料・農業・農村政策審議会食糧部会 資料(令和7年1月31日開催)
【参照ページ】米の輸出について
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