
シンガポールのグレース・フー持続可能性・環境大臣兼貿易関係担当大臣は3月3日、予算委員会(COS)審議で2026年を「気候適応年」に指定し、気候変動適応に向けた集団的アクションを活性化すると発表した。同国初の国家適応計画(NAP)を策定し、暑さへの耐性、沿岸部および洪水への耐性、水・食料への耐性等の適応策を包括的に見直す。
同氏は、気候変動の影響が激化している一方、主要な温室効果ガス排出国が、安全保障、エネルギー、貿易、投資を巡る世界的な緊張に対処する中、気候変動対策の義務を後回しにする可能性があると指摘。水と食料は頻繁な供給停止や不足により脅かされ、海面上昇は今世紀末までに同国の相当部分を浸水させ、経済や人命に大きな損失をもたらす可能性があると警鐘を鳴らした。
そこで政府は今回、気候リスクを特定し、長期的な適応戦略を策定することで、国家的な気候適応を主導する方針を提示。レジリエンス強化には、集団的アクションが必要とし、政府によるインフラ保護への投資だけでなく、企業に対しても、気候適応を中核的な経営戦略に組み込むよう求めた。
また、地域コミュニティに対しては、熱波、煙霧、洪水に対する緊急時対応訓練の実施、学校における生徒の服装や活動、教室環境の暑さへの適応、スポーツ団体によるトレーニング・スケジュールの調整、異常気象時の安全のための施設の改善等で、気候レジリエンスの構築を促した。
国家適応計画(NAP)の主要分野は、暑さへのレジリエンス、洪水へのレジリエンス、沿岸部へのレジリエンス、水と食料へのレジリエンスの4つ。まず暑さへのレジリエンスでは、研究開発(R&D)への投資を増強し、熱の影響に対する理解を深め、冷却ソリューションの開発と、効果的な行動変容を特定する。
洪水へのレジリエンスでは、最新の排水設計基準と気候予測を考慮し、排水インフラの適切性を定期的に見直しており、現在、複数プロジェクトが進行中と説明。洪水リスク軽減のための補助排水路の改善工事の実施や、ブキ・ティマ運河900mの排水改善工事を2026年中に完了させるとした。
沿岸部のレジリエンスでは、海面上昇から海岸線を守るため、同国周囲に連続的な沿岸防護ラインを構築する。すでに北西海岸の構想調査が完了し、西部貯水池を保護している水門の交換と堤防のかさ上げが推奨されることが明らかになった。同国セントーサ島と南西海岸の地点別調査は、2026年中に開始する。また、沿岸保護計画を実施するための法的・規制的権限を付与する「沿岸保護法案(Coastal Protection Bill)」を国会に上呈する。
水と食料のレジリエンスでは、供給の中断が発生した場合でも、国内の基本的要求が満たされるよう、集団的なアクションを進めていく。
国家適応計画(NAP)策定への参画では、2026年にフォーカス・グループ・ディスカッションや公開展示会を含む一連の対話を実施予定。気候適応の重要性や準備の必要性を話し合い、気候変動の影響への対処や適応に関して市民と意見交換を行う。詳細については、2026年中に発表予定とした。
さらに、気候変動の監視と予測の能力の強化に関しては、2025年9月に東南アジアの熱帯気候・気象研究を推進する「シンガポール気候・気象研究アライアンス(CAWRAS)」を設立し、2,500万シンガポールドル(約31億円)規模の気象科学研究プログラムを実施していると強調。
具体的には、AI活用により豪雨や強風の予測を強化し、スマトラ・スコールのような気象現象の予測精度を向上させるプロジェクトを展開。スマトラ・スコールとは、インドネシアのスマトラ島付近で発生した積乱雲の帯が、東へ移動してマレー半島やシンガポール周辺に、強風と激しい雨もたらす気象現象のこと。その他にも、高解像度の過去の気象記録を整備し、傾向を特定することで、地域の気候ダイナミクスに対する洞察を得られるようにするプロジェクトも実施している。
また政府は、オーストラリア、英国、米国の主要な研究機関との二国間合意の締結、暑熱ストレスセンサーのネットワークの拡大、国家環境庁(NEA)が主要な気象センターや気候研究センターのコンソーシアム「モメンタム・パートナーシップ」のコアパートナーを務めること等、気候変動適応に向けたアクションを進めているとした。
【参照ページ】Speech by Minister Grace Fu – Committee of Supply 2026
Sustainable Japanの特長
Sustainable Japanは、サステナビリティ・ESGに関する
様々な情報収集を効率化できる専門メディアです。
- 時価総額上位100社の96%が登録済
- 業界第一人者が編集長
- 7記事/日程度追加、合計11,000以上の記事を読める
- 重要ニュースをウェビナーで分かりやすく解説※1
さらに詳しく
ログインする
※1:重要ニュース解説ウェビナー「SJダイジェスト」。詳細はこちら