
オーストリア科学技術研究所(ISTA)は3月19日、山岳地域の水資源を対象とした新プロジェクト「MountAInWater」を開始すると発表した。現地調査、高解像度の物理モデル、AI、地域社会との連携を組み合わせ、世界初となる山岳水資源のグローバル再解析を目指す。
MountAInWaterは、研究支援財団シュミット・サイエンシズの水システム研究支援プログラム「Virtual Institute for Earth’s Water(VIEW)」に採択され、950万米ドル(約15億円)助成を受けている。
同プロジェクトでは、カナディアンロッキー山脈、アンデス山脈、パミール高原、ヒマラヤ山脈の4地域を「スーパーサイト」と位置付け、詳細な現地観測によりデータを収集する。取得したデータを活用し、氷河、雪、永久凍土に関する変化や、水の流動量を再現する物理モデルを高度化。シミュレーション結果を機械学習モデルの訓練に用いることで、分析対象を全球規模へ拡張する。
研究チームは、AIの活用により、高度な物理ベースモデルに伴う計算負荷を抑えつつ、世界の主要山岳地帯での雪氷圏と水の流動量を、最細1kmの空間解像度で再解析が可能。従来は全休規模で解析する場合、単純なモデルに頼らざるを得なかったが、今回は古典的な数値モデルとAI駆動型モデルを組み合わせることで、その制約を克服する。
また、同プロジェクトでは、これまで十分に考慮されてこなかった雪氷圏での非線形性や転換点も扱う。例えば、昇華から融解への移行、降水相の変化、氷河風に伴う非線形フィードバック、山岳陸面での蒸発・蒸散による水の放出量の変化等も分析。これにより、世界の水利用可能量の変化に関する新たな予測の提示を目指す。
全球再解析の完了後は、研究成果を基に、水利用可能性の大きな変化や脆弱性がある「地域的ホットスポット」に再び焦点を当てる。既に水不足に直面している、または今後その可能性が高い地域について、社会的・生態学的影響を掘り下げるとともに、地域のステークホルダーと協力しながら、水資源管理の戦略づくりを進める。
地域連携では、気候変動の影響を可視化し、適応策の検討を支援する対話型プラットフォーム「Mountain Digital Twin」も活用。現実的なシナリオに基づくシミュレーションを通じ、地域の意思決定を支える。
同プロジェクトには、ISTAに加え、カナダ、ドイツ、オランダ、ノルウェー、スイスの機関が参画。ISTAのフランチェスカ・ペッリッキオッティ教授の研究グループが主導し、氷河の現地調査や高解像度陸面モデルの開発・運用を担当する。また同研究所のフランチェスコ・ロカテッロ教授の研究グループがデータ解析とモデルシミュレーション高度化を支える。今秋に加わるシモーネ・ファティキ教授は、気候と山岳生態系の相互作用を研究する。
その他、ユトレヒト大学とサスカチュワン大学は、山岳水源の下流における生態学的影響を調査。チューリッヒ工科大学は、リモートセンシングと現地データを提供し、ミュンヘン工科大学とローザンヌ大学は、全球再解析向けAIモデルの開発・適用を進める。またワーヘニンゲン大学とFutureWaterは、水不足ホットスポットの特定と水資源配分のシミュレーションを担当。Climate Adaptation Servicesは地域主導の適応・緩和戦略の共同設計を担う。
研究チームは、水ストレスが作物生産、水力発電、生態系など社会に及ぼす影響を見通し、対応策の立案に繋げたい考え。山岳由来の水資源に関する過去・現在・将来の理解を深め、水安全保障の課題に対する実行可能な科学的知見の提供を目指す。
【参照ページ】Understanding Mountain Water – Worldwide
【画像】ISTA
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