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【国際】北方林の樹冠、永久凍土融解から土壌炭素約590億トン保護。初の定量化

【国際】北方林の樹冠、永久凍土融解から土壌炭素約590億トン保護。初の定量化 3

 ドイツのフンボルト大学ベルリン、アルフレッド・ウェゲナー極地海洋研究所、ノルウェーのオスロ大学等の国際研究チームは7月27日、北方林の樹冠による熱的緩衝作用が、連続永久凍土地域で土壌有機炭素約590億tを凍結状態に維持しているとの研究結果を発表した。森林が永久凍土の融解を抑える現象自体は従来から知られていたが、その効果によって凍結状態に保たれている土壌炭素量を、森林に覆われた連続永久凍土地域全体で初めて定量化した。

 北半球の連続永久凍土地域の約4分の1は森林に覆われている。同地域の森林が貯留する炭素の約95%は、地上の樹木ではなく、季節的に融解する活動層や永久凍土内の土壌に存在。北方林の樹冠は夏季の日射を遮り、地表面に到達する短波放射を最大90%減少させる他、積雪、蒸散、土壌水分、地表からの熱放射等を変化させ、地中への熱流入を抑えている。

 森林の喪失によって活動層が深くなり、氷を多く含む永久凍土でサーモカルストが発生しやすくなることも、現地観測等で指摘されてきた。一方、地球システムモデルでは、森林と地表面の間の熱交換が十分に再現されておらず、樹冠が保護する土壌炭素量は広域に定量化されていなかった。

 そこで研究チームは、永久凍土の熱・水分動態を再現するプロセスベースモデル「CryoGrid」を活用。ユーラシアと北米の森林に覆われた連続永久凍土地域を、気候、植生、地域の違いに基づく16の生物気候クラスターに分類し、樹冠が存在する森林状態と、森林被覆が存在しない裸地状態を比較した。落葉針葉樹林、常緑針葉樹林、落葉広葉樹林の3タイプや樹冠密度の違いも反映した。

 分析の結果、2018年から2023年までの平均では、裸地シナリオの活動層の厚さは、森林が存在する場合に比べ50.2%から62.3%大きかった。樹冠は裸地と比べ、活動層を0.87mから1.43m浅い状態に維持。北米では平均1.2m、ユーラシアでは平均1.02mの差が確認された。

 森林に覆われた連続永久凍土地域には、深さ3mまでに約1,830億tの土壌有機炭素が存在し、このうち約1,180億tが凍結状態にある。研究チームは、樹冠の熱的緩衝作用がなければ季節融解の影響を受ける土壌有機炭素を、樹冠密度の想定に応じ約379億tから411億tと推計した。

 さらに、氷を多く含む永久凍土では、氷の融解に伴う地盤沈下でサーモカルストが発生し、通常の漸進的な融解より深い位置の炭素も急速に融解する可能性がある。研究チームは、この急速融解から樹冠によって保護されている炭素を約177億tから209億tと算出した。

 漸進的融解と急速融解を合わせると、樹冠によって凍結状態に保たれている土壌有機炭素は約590億tに達し、同地域の土壌有機炭素全体の約32%に相当する。中程度の樹冠密度を想定した場合、約395億tが活動層の深化による漸進的融解、約195億tがサーモカルスト等による急速融解から保護されていると推計した。

 樹冠密度の想定によって両者の配分は変化するが、裸地シナリオでは分析対象地域のほぼ全域で融解深度が3mを超えるため、合計量は約590億tで概ね変わらなかった。

 今回の研究は、北方林の気候変動緩和機能を、樹木が吸収・貯留する炭素だけで評価すべきではないと示した。対象地域の地上部、根、林床植生、落葉等に蓄積されるバイオマス関連炭素は約72億tから186億t。これに対し、樹冠によって凍結状態に維持される土壌炭素は約590億tで、最大推計値と比べても約3倍に上る。

 連続永久凍土地域の北方林は、炭素吸収源としてだけでなく、地下の巨大な炭素貯蔵庫を凍結状態に保つ熱的緩衝材としても機能している。樹冠を喪失した場合、樹木等に蓄積される炭素を大幅に上回る土壌炭素が融解環境に晒される可能性がある。

 また、樹冠が密であるほど永久凍土の保護効果が高まるという単純な関係ではなかった。密な樹冠は日射を強く遮る一方、地表からの長波放射を閉じ込め、蒸散によって土壌を乾燥させる。乾燥した土壌では熱伝導率が低下し、冬季に地中の熱が放出されにくくなるため、日射遮蔽による冷却効果の一部が相殺される。

 その結果、疎らな樹冠でも強い冷却効果が確認された。旱魃、害虫被害、選択伐採等による部分的な樹冠喪失が、森林面積や樹冠量の減少割合と同じ比率で永久凍土の保護機能を低下させるとは限らない。

 森林火災は、樹木や地表付近の有機物を燃焼させるだけでなく、樹冠や林床の断熱機能を失わせ、その後の活動層の深化と土壌温度の上昇を引き起こす。既存研究では、火災と地盤沈下の影響を受けた土壌で、深さ1.25mまでの炭素量が半分以下に減少し、燃焼による直接損失よりも、融解後の微生物分解による損失が大きかった事例も確認されている。

 一方、今回の約590億tは、樹冠喪失等によって融解環境に晒された場合に、全量が直ちに二酸化炭素やメタンとして大気中に放出される量ではない。実際に分解される割合は、炭素の性質、土壌水分、温度、酸素条件等によって異なる。

 また今回の分析は、将来の森林喪失や永久凍土融解を予測したものではなく、現在の樹冠が永久凍土に及ぼす熱的・水文学的な緩衝効果を定量化したもの。研究チームは、約590億tを、樹冠の存在によって現在融解を免れている土壌炭素量と位置付けた。

 同研究チームは、連続永久凍土地域の森林保全では、樹木のバイオマスや炭素吸収量だけでなく、樹冠による地下の土壌炭素の保護機能を考慮する必要があると強調。森林火災、伐採、旱魃、暴風雨、害虫被害等による樹冠喪失の影響を考慮し、特に炭素量と氷含有量の多い永久凍土地域で樹冠を維持することが、永久凍土炭素フィードバックを抑える上で重要とした。

【参照ページ】Canopy-mediated climate feedbacks in the boreal continuous permafrost zone

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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