国際人権NGOヒューマン・ライツ・ウォッチは1月24日、タイの漁業では強制労働等の人権侵害が引き続き蔓延しているとする報告書「Hidden Chains: Forced Labor and Rights Abuses in Thailand’s Fishing Industry」を発表した。タイ政府は、抜本的な改革を宣言しているものの、実効性のある進展は見えないという。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、EU、米国、日本の消費者に向け、人権侵害に関与しない漁業の重要性を訴えた。
報告書によると、タイ漁業には、カンボジアやミャンマーからの移民労働者が多数働いており、雇用主から借金漬けにされ過酷な労働環境から逃げられなくする行為が蔓延しているという。また、給与も最低賃金を下回り、さらに期日通りに払われいことも常態化しているようだ。移民労働者には、タイ労働法が及ばないため、労働組合を結成する権利もない。
タイ漁業については、すでにEUは2015年、違法・無報告・無規制(IUU)への関与があるとして「イエローカード」を警告し、タイからEU域内への魚介類輸出を禁止する措置をちらつかされている。一方、韓国、フィリピンの「イエローカード」指定は解除された。また米国政府も、2017年の人身取引(TIP)報告書の中で、タイを特別調査の対象となる「Tier 2ウォッチリスト」に位置づけた。
タイ政府は2014年に「水産業における労働権保護命令」を発し、国際労働機関(ILO)条約の一部義務を国内法化した。これにより、移民労働者の業務中の携帯義務や漁船出入港時の乗組員名簿提示義務が定められ、漁業中に殺害や行方不明になるリスクは減少した。また、船舶監視システムや長期漁業を最長30日に制限する措置もとっている。
ヒューマン・ライツ・ウォッチは今回の報告書作成にあたり、現地で移民労働者または元移民労働者248人にヒアリングを実施。タイ政府の漁船検査や取締は徹底されていない事実を暴き出した。
今回の報告書は、EUの欧州議会でも報告された。
【参照ページ】Thailand: Forced Labor, Trafficking Persist in Fishing Fleets
【参照ページ】EU acts on illegal fishing: Yellow card issued to Thailand while South Korea & Philippines are cleared