欧米主要機関投資家18機関が参加する低炭素経済推進イニシアチブ「Transition Pathway Initiative(TPI)」は12月4日、輸送・交通業界の気候変動と二酸化炭素排出量削減の取り組みを分析したレポートを公表した。輸送・交通業界は、エネルギー由来の二酸化炭素の25%近くを排出している。しかし、わずか19%の企業しかパリ協定の2℃目標に沿った排出削減目標を持っていないと警鐘を鳴らした。調査と分析は、TPIのアカデミックパートナーである英ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)のグランサム研究所が担当した。
同レポートでは、時価総額を元に自動車企業22社、海運企業13社、航空機企業22社を対象。日本企業も多数、対象となった。「マネジメントの質」と「排出パフォーマンス」の2つの観点から分析した。「マネジメントの質」では、二酸化炭素排出対策と低炭素社会への移行対策の企業ガバナンスを評価し。「排出パフォーマンス」では、パリ協定の2℃目標をベンチマークとし、企業の削減目標を評価した。分析に使用したデータは全て公開データを利用した。
自動車業界は、43%が「マネジメントの質」のスコアを昨年度より向上させた。59%が気候変動の取り組みを取締役の報酬制度に組み入れ、77%が製品使用の際の二酸化炭素排出量を開示していた。「排出パフォーマンス」に関しては、9社(41%)がパリ協定と整合する目標設定を計画しており、昨年より12%増加した。排出原単位の業界平均は、2016年から2018年にかけ、2%から2.5%の削減が見られた。すでに、2℃目標達成に沿っている企業は独ダイムラーと米テスラの2社のみ。日本企業のマネジメントの質は、トヨタ自動車と本田技研工業が、最上位のレベル4。日産自動車、三菱自動車、スバルはレベル3。スズキはレベル1。
海運業界は、二酸化炭素排出量の3%を占める。すでにパリ協定と整合性のある削減目標を定めた企業は、そのうち8社(61%)。今回対象の大手13社については、低炭素船の使用を開始する等の努力が見られるが、業界全体では、排出原単位の削減目標は、TPIの分析したすべての業界の中でも最も低かった。日本企業のマネジメントの質は、商船三井と川崎汽船が、最上位のレベル4。日本郵船がレベル3。
航空業界は、「マネジメントの質」スコアが、2019年春のものと比べて8%以上の改善が見られたものの、「排出パフォーマンス」の観点からは、最下位の石油ガス業界に次ぐ低評価だった。60%がパリ協定の2020年目標に沿った排出量削減計画をもっているものの、2020年以降に関してはほとんどの航空企業がカーボンオフセット活用の目標しか持っていない。
しかし、欧州委員会が公表したカーボンオフセットに関する報告によれば、85%のプロジェクトが目標未達成に終わっていて、TPIは目標に含まれるオフセット分を評価対象から外した。その結果、2030年時点では20社がどのベンチマークにも届かず、2℃目標達成の2030年目標に沿った計画を持っているのは、ハンガリーの航空大手ウィズエア1社だった。日本企業のマネジメントの質は、ANAホールディングスが最上位のレベル4。日本航空がレベル3。
【参照ページ】One in three major transport firms now align with Paris pledges, but sector must rev up climate ambition to match 2020 fast track
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