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【ビジネス・サービス】人口構造に見るこれからの日本の働き方とは? 2015/02/11 事例を見る

残業を無くし業績を上げる。そんな画期的なコンサルティングを展開するのが、株式会社ワーク・ライフバランス社。今回ご紹介するのは、同社の小室淑恵社長が、2014年7月に開催された「第19回国際女性ビジネス会議」で行なったプレゼンテーションです。小室さんは、求められる働き方は人口構造によって変化すると語り、現代日本における「働き方の変革」の必要性を訴えています。

人口ボーナス期・人口オーナス期にそれぞれにおける働き方

では、人口構造は働き方にどのように影響するのでしょうか。小室さんは、ハーバード大学のデービット・ブルーム教授が提唱する「人口ボーナス期」と「人口オーナス期」をキーワードに論を展開しています。

人口ボーナス期

人口ボーナス期とは、出生率も死亡率の高かった時代から、子供を産む数が減少に転換していく段階の時期を指します。高齢者がまだ多くはない時期でもあり、この時期には全人口に占める子供と高齢者の割合が小さくなり、生産年齢人口が多くなります。この期間は社会保障費が嵩まず、豊富な労働力が経済を活発にするため、国として経済発展しやすいと考えられています。現在の中国や韓国、シンガポール、タイなどが人口ボーナス期にあたる国だと言われています。
人口ボーナス期は労働力に溢れ、労働賃金が安く済むため、国内に仕事が集まり、特に重工業が発達します。さらに、この期間は市場の消費意欲も旺盛で、物は作れば作るだけ売れるので、均一のものを大量生産することに重点が置かれる時期でもあります。
このとき企業は効率的に生産量を増大させるため、社内に同じタイプの従業員を育成し、長時間労働を強いていきました。また、均一なタイプの従業員は替りがきくため、企業は昇進において忠誠心を重視しました。残業を厭わない、出張や転勤でも耐えられる人が企業にとって「優秀な社員」だと見なされていました。

人口オーナス期

一方、人口オーナス期とは人口ボーナス期の次のフェーズを指し、社会が少子高齢化する結果、働く人よりも高齢者が多くなる状態のことを指します。高齢者の増加によって社会保障費が増大、さらにそれを支える生産年齢人口も少ないため、社会保障制度が大きな社会課題となっていきます。北欧諸国を含むEUの国々など先進各国は既に人口オーナス期に入っていると言われています。
人口オーナス期においては消費者市場も大きく変化します。生活必需品は既に社会に広く行き渡っており、むしろ商品ニーズが多様かつ複雑になっていきます。環境は「同じものを早くたくさん作ったものが勝つ」時代から、「何をつくるかを適切に考えだしたものが勝つ」時代に変化していきます。こうした事態に対処するためには、単純肉体労働者よりも、次々とヒット商品を生み出せる知的労働者が男女を問わず必要となります。また、それに応じて賃金も上昇します。
多様化する商品ニーズ、上昇する賃金、減少する労働者人口。この人口オーナス期に企業に求められる戦い方は、多様な知的労働者を雇用し、その知的労働者が働きやすい環境を作って雇用を維持し、忠誠心の踏み絵であった長時間労働をなくすことで短時間労働、人件費抑制を実現していくことになります。こうすることで社会全体にも大きなメリットが生まれます。短時間労働を実現し、ワーク・ライフバランスを改善した結果、人々が安心して子供を産むことができる社会となり、少子化にもブレーキがかかっていくのです。

日本の働き方の問題点

日本の人口ボーナス期は1990年代に終了し、既に人口オーナス期に急速に突入していると言われています。小室さんは、この急速な人口オーナス期への突入の要因は少子化にあり、さらにはその少子化の原因は日本の長時間労働慣行にあると考えています。
日本では今の時代にも、人口ボーナス期に培われた、残業を厭わない、出張や転勤でも耐えられる人が企業にとって「優秀な社員」だと見なす価値観が続いています。時代の変化を捉え、日本の企業が競争力を保つためには、人口オーナス期に相応しい労働慣行が必要となります。繰り返しにはなりますが、ポイントは以下の3点です。

  • 多様な知的労働者の雇用
  • 知的労働者が働きやすい雇用環境の維持
  • 短時間労働、人件費抑制の実現

団塊世代が70歳を超えるようになると、現在の労働者の中にも介護に時間を割かなければならない層が現れ、企業もその対応に追われるようになります。そういった近い将来に備えた仕組みを整えていくことが必要であると言えるでしょう。
同氏はTEDxTokyoにおいてもワーク・ライフバランスについてのプレゼンテーションを行っています。興味のある方は是非ご覧ください。

著者プロフィール

菊池尚人

株式会社ニューラル サステナビリティ研究所研究員

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