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【国際】IIRC、統合報告は経済の安定性と持続可能な発展の基礎をなす

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IIRC(The International Integrated Reporting Council:国際統合報告委員会)のCEOを務めるPaul Druckman氏が、先日世界銀行で開催された統合報告セミナーの中でイングランド銀行総裁、G20金融安定理事会の議長を務めるMark Carney氏が紹介した“tragedy of horizons(限界の惨事)” という経済リスクに関する新しい言葉をIIRCのブログの中で紹介している。

“tragedy of horizons”とは、企業や投資家らが、気候変動などの長期的なグローバル課題が経済の安定性に与えるリスクを十分に認識していながらも、短期的な思考に基づきそうした課題に対する適切な対応を怠ることでもたらされる市場の失敗を意味する。

IIRCのDruckman氏によれば、Carney氏はセミナーの中で統合報告の価値について「統合報告は、投資家らが『短期志向で管理できるものだけではなく、長期的な課題に対応する際のコスト』についても考える手助けをしてくれる」と語ったという。

また、Druckman氏はCarney氏がセミナーの中で語った「(統合報告を通じて)あらゆる組織は自身の考えを表現し、資本や信用の配分に影響を与えることができる」というコメントに対し、これは非常に重要なポイントで、統合報告は資本をより生産的な形で流動させ、短期・中期・長期を超えた価値創造を促すものであり、それこそが財務の安定性および持続可能な発展の基礎をなすと述べている。

現在統合報告を推進している世界銀行CFOのBertrand Badre氏もCarney氏の考えに賛同している。世界銀行とIMFは、長期的な課題に対するリスク管理の失敗は過去数十年に渡る新興国へのインフラ投資を無駄にすることにつながりかねないと懸念しており、Badre氏は「統合報告は、政府やステークホルダーが入手可能な資本に対する理解を深め、それらをより効率的に管理できるよう手助けすることを可能にしてくれる」と統合報告の意義を語ったとのことだ。

IIRCは、”tragedy of horizon”の分析を正当化するために一連のリスクを声高に主張することも有効だが、本当の意味で統合報告が利益を生み出すのは、政府、企業、投資家らが相互の関係の中でそのリスクを認識したときだとしている。

IIRCは、気候変動などの長期的リスクが実際の経済に与える影響は大きく、対応の如何でグローバルで年間5,000億ドルのインフラ投資の差を生み出すと推定しており、それこそが統合報告の推進に向けたG20からの支援が重要な理由だとしている。企業報告のあり方を経済政策の目標に一致させることが重要だというのがIIRCの考えなのだ。

Druckman氏は、Carney氏の言う”tragedy of horizons”は統合報告をリスク管理・報告の新たなベストプラクティスとして採用するべき理論的解釈を提供してくれており、統合報告は財務安定性と持続可能な発展を実現する上で大きな手助けとなると表現している。

気候変動などのグローバル課題は政府、企業を問わず全てのステークホルダーに共通の課題であり、その解決に向けて統合報告が果たす役割は今後ますます大きくなると考えられる。

財務情報と非財務情報を統合した企業報告の実践により、企業と投資家のコミュニケーションを短期重視からより長期重視の視点へと変え、グローバル課題の解決に積極的に取り組む企業に市場のお金が集まるような仕組みを作り出していくことが、統合報告の役割だと言える。

【記事原文】Carney: Integrated Reporting provides chance to address “tragedy of horizons” ? the great risk to economic stability today
【団体サイト】IIRC

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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