企業のサステナビリティ格付・ランキングが人権の分野まで広がっている。グローバル企業は自社および自社サプライチェーンが抱える人権リスクへの対応状況をより問われることになりそうだ。
ESGリサーチ大手のEIRISは12月3日、グローバル大手の投資・資産運用会社、NGO、シンクタンクらと共同で、新たに企業の人権に関するパフォーマンスを格付・ランキング化するプロジェクトを開始すると発表した。農業、ICT、アパレル、鉱物など様々な業界の合計500社以上が調査対象となり、人権の分野に特化した世界規模のインデックスとしては今回の取り組みが初めてとなる。
なお、同プロジェクトは同日にスイスのジュネーブで開催された第3回UN Forum on Business and Human Rights(国連ビジネスと人権フォーラム)の中で正式に発表された。今後はプロジェクト参画企業・NGOらがThe Corporate Human Rights Benchmark(CHRB)として企業の人権における取り組みを格付したランキングを作成し、その情報を一般公開することによって人権分野における企業の事業慣行改善を促していく予定だ。
今回の格付プロジェクトに参加する企業および団体としては、EIRISの他にAviva Groupの資産運用会社Aviva Investors、人権に関する国際NGOのBusiness and Human Rights Resource Centre、投資会社のCalvert Investments、人権とビジネスに関するシンクタンクのThe Institute for Human Rights and Business、サステナブル投資を推進するオランダの投資団体VBDOが挙げられる。
人権に関する主なグローバル動向としては、昨年にバングラディシュのダッカ郊外で起きた縫製工場ビル「ラナ・プラザ」崩落事故を受け、多くのファッション・小売企業が”Bangladesh Safety Accord”(バングラディシュ安全協定)に調印し、業界全体としてサプライチェーンにおける透明性向上、工場監査・レポーティング強化などの取り組みを進めてきた。
また、他の事例としては飲料大手のCoca-ColaおよびPepsiが今年、土地の横領ゼロにコミットする方針を表明したほか、EUが人権上の懸念からスパイウェア監視技術の輸出制限をまもなく開始予定、米国が紛争鉱物に関する法規制により武装勢力の貿易利益を65%減少させるなど、世界中でビジネスにおける人権の保護・向上に向けた取り組みが進んでいる。
こうした企業の活動をさらに後押しするのが、第三者による企業の取り組みの可視化、格付・ランキング化だ。例えば、医療分野では世界中に薬の普及を目指して活動しているNPOのThe Access to Medicine Foundationが公表している製薬業界向けの格付インデックス”The Access to Medicine Index”が、製薬会社らに対してHIV/AIDSや結核に苦しむ貧困層の人々に対する安価での薬の提供を促している。
他にも、国際NGOのOxfamは、食品・飲料業界の大手グローバル企業のビジネス慣行を明らかにするプロジェクトBehind the Brandsを通じ、不正な土地利用の撲滅、サプライチェーンにおける女性の地位向上、温室効果ガス削減などを促している。
今回のプロジェクトに参加するAviva InvestorsのSteve Waygood氏は「我々のベンチマークは、人権分野でトップになろうとする企業同士のポジティブな競争環境を生み出すだろう」と語った。また、Business and Human Rights Resource CenterのPhil Bloomer氏は「このランキングは、上位の企業の優れた点を発表する機会になり、下位の企業は改善するための努力をする機会になる良いツールとなる」と今後の期待を語った。
サプライチェーンのグローバル化が進む中、人権に関する問題はグローバル企業にとって最も重要なサステナビリティ課題の一つとして顕在化しつつある。特に東南アジアやアフリカといった途上国地域における人権問題はより表面化してきている。今回の人権インデックスの開発・公表を通じ、これから対象企業の行動が具体的にどのように変わっていくのか、今後も注目だ。
【企業サイト】EIRIS
【参考サイト】UN Forum on Business and Human Rights
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