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【アメリカ】マッキンゼー・パートナー、「サステナビリティは企業価値評価に影響を与える」

 コンサルティング世界大手マッキンゼー・アンド・カンパニーは3月17日、昨年12月に同社ニューヨークオフィスのティム・コラー・パートナーと、元同社アソシエイトパートナーで現在FCLT Globalのリサーチ部長を務めるジョナサン・ベイリー氏が行った対談の内容を公表した。対談のタイトルは「When sustainability becomes a factor in valuation(いつサステナビリティは企業価値評価要素となるのか)」。重要性が高まるサステナビリティ経営において、マッキンゼーの視界が垣間見られる内容となっている。

 対談に参加したコラー氏は、日本でもベストセラーとなっている企業価値評価(バリュエーション)に関する専門書「企業価値評価」の著者。企業価値評価分野で世界的な権威の一人だ。今回の対談は、ベイリー氏の質問に対し、コラー氏が企業価値評価におけるサステナビリティの意義という観点から回答する構成となっている。

 まずコラー氏は、過去何百年に渡る企業価値評価の歴史において、一貫してキャッシュフローが重要となってきたという前提を提起。サステナビリティも企業キャッシュフローに影響を与えるという点から重要になるという見方を示した。そのため、サステナビリティがもたらすキャッシュフロー影響に対しての対応方法を長期視点から検討するのは経営者の責務だとした。また、経営者に比べ投資家は企業に関する情報インプットが遅れることが多く、市場での企業価値評価はしばしば反応に時間差があるとも話した。コラー氏は、石油ガス産業における「座礁資産」の考え方を例に挙げ、投資家はサステナビリティが企業キャッシュフローに与える影響が明確になった場合には、敏感に企業価値評価に反映するという最近の動向を紹介した。

 続いてベイリー氏は、企業財務の視点から企業経営者がサステナビリティなど長期目標を統合させていく上で重要となるものは何かと質問。コラー氏は、企業経営者が陥りやすい考え方として、意思決定の際に「何かをしなかったらどうなるか」ということを無視しがちであるということを挙げた。すなわち、企業経営者は、経営計画や経営戦略を検討する際に、手なりのベースライン(基準シナリオ)を設定し、そこからの改善プランというものを追求していくが、そもそもベースラインの立て方に問題がるということだ。コラー氏は、このことを具体例を挙げて解説している。例えば、ある経営者は、売上増加策のため、競合商品以上に顧客支持を獲得できるようサステナビリティ施策を打つということがある。しかし一方、そもそも安全性や環境影響を削減する措置を取らなかった場合にベースラインのキャッシュフローが低下するということを見落としがちだという。

 またコラー氏は、投資家と企業経営者の間のコミュニケーションのあり方について、現状では投資家向けの情報開示が、いわゆる定形文句の羅列になってしまってことが多いことや、企業は何か不祥事などの問題が起こってからしか対応をしないことが多い現状を残念だとした。一方、好事例としては、先進的な消費財メーカーの中に、サプライヤーに特定の調達基準を満たすよう要求していることを積極的に開示する企業が出ていることなどを紹介した。

 企業の情報開示については、コラー氏は、投資家が投資判断においてより良いESGデータを求めるようになった大きなトレンドを指摘。投資家は投資先決定において1ヶ月以上もの時間をかけて企業分析をしており、マテリアリティ(重要性)の高い要素を見極めることにますます大きな関心を示しているとした。また、投資家の目は、企業の開示データ量よりも、企業にとって今後何が重要となり、キャッシュフローを左右する要因は何で、それにどう対処するのかを企業経営者が語れるかどうかにあるとした。

 これについてベイリー氏は、しばしば「CEOはセルサイドのアナリストから(サステナビリティ関連の)トピックについて全く質問されたことがないと言っている」という声があることを踏まえ、サステナビリティに関する投資家と企業経営者のコミュニケーションは、通常の四半期決算報告会ではなく、1対1の個別ミーティングの中で質疑されることが多いことを紹介。コラー氏も同様に、四半期決算報告会と1対1ミーティングのアジェンダは異なることが多く、サステナビリティに関する議論については1対1ミーティングの重要性が高いとした。またコラー氏は、投資家から1対1ミーティングの依頼を獲得するためにも、積極的に情報開示することが重要だとも話した。

 最後にコラー氏は、長期投資家の声として、企業経営者が四半期決算報告会の場でも長期的に重要だと考えるテーマについて話すことを期待していることを紹介。セルサイド・アナリストが聞きたいことを推察しながら話をするのではなく、経営者自身が本当に重要だと考えることを話すべきだとした。

【参照ページ】When sustainability becomes a factor in valuation

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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