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【アメリカ】米コロンビア大教授ら、海面上昇で沿岸部の不動産・インフラ価値低下と警鐘

 米コロンビア大学の各分野の教授は5月4日、コロンビ大学主催の「気候科学・投資フォーラム」のセッションの場で、今後の海面上昇が米国沿岸部の不動産価値を引き下げるという考えを表明した。教授らは、米国沿岸部の海面は今世紀末までに2フィート(約0.6m)から15フィート(約4.6m)上昇すると見通し、それにより沿岸部の地形は大きく替わり、近隣不動産やインフラ価値は損なわれるという。

 今回のセッションに登壇したのは、コロンビア・ビジネス・スクールのGeoffrey Heal教授(社会的企業論)、コロンビア・ビジネス・スクールのChristopher Mayer教授(不動産論)、コロンビア大学が所有するラモント=ドハティ・アース天文台のRadley Horton特任准教授(生態系、進化、環境生物学)の3名。海面上昇と沿岸部開発についてディスカッションした。

 Geoffrey Heal教授とラモント=ドハティ・アース天文台のMarco Tedesco研究教授は最近、海面上昇がもたらす経済損失についての論文を発表。例えば、ニューヨークでは約1.8m海面上昇で390億米ドル(約4.3兆円)、3m上昇で1,000億米ドル(約11兆円)の不動産損失額が発生すると算出した。Heal教授は、「海面上昇は以前は小さいと思われていたが、ここ8、9年ではより大胆な予測がされるようになり、そちらのほうが信憑性が高くなってきた」と語る。

 またHeal教授は、過去10年の間にハリケーンも猛威は増え、さらに晴天でも海面上昇による高波が洪水をもたらす「サニーデイ洪水」がフロリダ州で発生してきていると指摘。さらに沿岸部の侵食により影響は高まるだろうとした。フロリダ州マイアミやサウスカロライナ州チャールストンでは、毎年洪水発生頻度は3倍から4倍に増えており、2050年までに100倍から200倍にまで上がると予測した。その上でHeal教授は、沿岸部の不動産開発やインフラ整備への影響に言及。民間投資では5年から10年でペイバックすることを期待し、官民合同投資では30年程度、政府によるインフラ投資では永久に構造物が存続することが期待されているが、5年から10年以内に洪水により損失の危険があると言及した。

 Christopher Mayer教授は、不動産デベロッパーの多くは開発の際に海面上昇を考慮していないと指摘し、具体例としてボストンのウォーターフロント開発を挙げた。また、Mayer教授は別の場でも、不動産デベロッパーは「つくって売っているだけだ」とモラルを批判し、実際に政府統計によると洪水リスクにより沿岸部の不動産価値は加速度的に下がってきていると述べた。そのため、金融市場に海面上昇による損失リスクを周知される役割を保険業界に期待した。一方、不動産価値を下げたくない住民による抵抗を受け、情報周知を政府が妨害することも起きているとも話した。

【参照ページ】Sea Level Rise and Coastal Development: Science Speaks Directly to Business
【論文】Rising Oceans: Economics and Science

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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