国際環境NGOの世界資源研究所(WRI)は11月25日、国際食糧政策研究所(IFPRI)が提供する農作物と食料安全性に関するデータ、及び水リスク指標を掛け合わせ、現在および将来の水リスクをマッピングするツール「Aqueduct Food」のベータ版を発表した。同ツールは、米穀物大手カーギルの資金協力の下で開発。政府、企業、開発機関らの農業政策、投資、調達に関する科学的根拠に基づく意思決定のために活用されることを狙っている。
人が利用可能な淡水は希少なため、農業、自治体、産業の間での水資源の競争は激化している。世界の淡水取水量の70%を農業が占めており、毎年利用可能な水供給の80%が消費されている状況。WRIは、世界人口の4分の1が居住する17か国が「極端に高い」水ストレスに直面していると分析した。高い水ストレスに晒される灌漑作物の割合も現在の32%から、2040年までに40%にまで高まると懸念を示した。
また2040年に世界の食料需要を満たすには、食糧生産料を2010年比で42%増やす必要がある。しかし、気候変動に伴い、2010年から2040年にかけて給水の季節変動が大きくなり、天水作物は干ばつリスク等の影響を受ける。農家はこうした変動にある程度は慣れているものの、気候変動による変化は予測の域を上回る可能性がある。天水バナナ生産の12%はすでに非常に大きな季節変動影響を受けているが、2040年までに45%まで上昇すると推定。バナナは食料アクセスにとって非常に重要で、発展途上国4億人が食料や収入源としてバナナに依存しているとした。
同ツールでは、 バナナ、コーヒー、大豆、トウモロコシ、小麦、米、綿等の作物データ40以上を基に、各国の水ストレス、干ばつリスク、需要の増加、商品価格、人口増加、気候変動エクスポージャーを分析できる。水アクセスを食料生産増加の弊害としないため、レジリエンスに関するより良い計画と緊急の対応が必要となる。灌漑効率の改善、劣化した土壌の復元、生態系に適した作物の選択、食物損失と廃棄物の削減、水ストレス地域における水多用食物生産の差し控え等、水リスクと食物の不安定性を軽減する多くの対策措置が期待される。
【参照ページ】RELEASE: One-Third of All Irrigated Crops Face Extremely High Water Stress
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