【国際】「過去50年間の気候予測モデルの精度は極めて高い」学術誌論文発表。将来の温暖化を警告

　カリフォルニア大学バークレー校の研究員らが発表した論文によると、過去約50年間に気候科学者たちが開発した気候モデルを検証した結果、地球の気温変化は正確に予測されてきたことが明らかとなった。同研究員らは、「地球温暖化の否定は信憑性がなく、神話に過ぎない」と警告。当時によりもシミュレーション精度が上がっている現時点の予想は、さらに正しい予測となるとの見方を示した。

　今回の論文は、1970年から2017年末までの約50年間、コンピュータシミュレーションされた二酸化炭素濃度等の地球環境と気温に関連に関する気候モデルを精査したもの。1970年、1981年、1988年のモデル、そして国連の気候変動に関する政府間パネル（IPCC）による最初の4本のレポートに記述されているモデルを含む、17のモデルが対象とした。論文は、学術ジャーナル「Geophysical Research Letters」に、論文名「Evaluating the performance of past climate model projections」で発表された。

　気候モデルの前提となっているのは、基本的に2つの要素。1つ目は大気の物理的・化学的性質と、それらの熱吸収ガスに対する反応。そして2つ目は大気中に放出される温室効果ガスの量。「今回検証した気候モデルは、17モデルのうち14モデルの予測が実際に発生した事象と区別できないほど的中している」と論文の主著者であるジーク・ハウスファザー氏はそれらの業績を称賛する。1970年代に公表された研究結果も、その精度は驚くほど高いと評価している。

　同氏らは当初、各モデルで提唱された地球上の二酸化炭素濃度に伴う気温変化の予測と、米航空宇宙局（NASA）のGISTEMPや米海洋大気局（NOAA）のGlobalTemp等のデータを使用して実際に観測された気温の推移およびタイムスケールとを比較してみた。その際には、17モデルのうち、10モデルでのみ正確さが確認された。4モデルは、実際より激しい気候変動を予測し、3モデルは、実際より緩やかな予測していたという。

　加えて、二酸化炭素以外の温室効果ガスの増加や、大気中の微小粒子（エアロゾル）等の要因により地球エネルギーの不均衡を生じさせる「放射強制力」の変化ごとの温度の変化を基に、これらのモデルと実際の観測値とを対比したところ、17モデルのうち、14モデルが正確に予測していたという。不正確だった3モデルのうち2モデルは、実際より激しい気候変動を予測し、1モデルは実際より緩やかな予測していたという。

　さらに、これらすべてのモデルと観測値とを、1.00を完全一致としてスキルスコアを評価したところ、中央値は0.69だった。気温とタイムスケールに関するスキルスコアの最高値は1981年から2017年までのモデルを提唱したHansen等のもので0.93で、1970年から2000年までのモデルを提唱したMitchellは0.91、同期間の別のモデルを提唱したプリンストン大学の眞鍋淑郎博士は0.84という極めて精度の高いものだった。眞鍋氏は長年の気候モデル等の研究に対し、2018年にクラフォード賞を受賞している。

　ハウスファザー氏が指摘するように、年間気温の推移を見る際に、まだ温室効果ガスや気候変動がほとんど注目されていなかった1970年代初頭に、すでにこの課題に取り組み、非常に精度の高いモデルを提唱していたことは、一部の気候科学者の際立った先見性を示している。本論文の半世紀のリビューにより、温暖化は明確な根拠をもつことが改めて確認された。

【論文】Evaluating the performance of past climate model projections

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