欧米主要機関投資家の低炭素経済推進イニシアチブは3月20日、主要業界の低炭素移行度合いを分析し、数多くの企業が不十分と警鐘を鳴らした。日本についても、欧州より遅れていると改善を求めた。
今回発表されたのは、「Transition Pathway Initiative(TPI)」が実施した2020年の活動年次報告書。主要業界の低炭素移行度合いを分析し、数多くの企業が不十分と警鐘を鳴らした。TPIの参加機関投資家数は現在67。運用資産総額は18兆ドル(約1,985兆円)を超える。
今年の分析では、電力、石油・ガス、アルミニウム、セメント、製紙、鉄鋼、航空、自動車、海運の9業種を対象に選んだ。分析企業数は、今回「排出パフォーマンス」で238社、「マネジメントの質」では332社。「排出パフォーマンス」は2℃目標に対する企業の取り組みを、「マネジメントの質」は、CO2排出対策と低炭素社会への移行対策の企業ガバナンスを評価するもの。算定は全て公開データに基づき行われている。
「排出パフォーマンス」では、2℃目標と整合性のある状況にある企業は、43社で全体の18%。昨年の16%からわずかに増えたが、それでも非常に少ない状況だった。そのうちさらに2℃未満にまで抑えようとしている企業は、30社あった。業種別では、海運が先進的で、それを製紙と電力が続く形。一方、脱炭素への転換があまり進んでいない石油・ガスと航空は非常に遅れが目立った。
「マネジメントの質」では、ロスネフチ、ダウ、デュポン等38%の企業が低炭素社会に向けたコーポレートガバナンスを実施していないと報告された。高評価に該当するレベル3または4を取得した企業は62%を占め、日本企業からは、商船三井、川崎汽船が最上位のレベル4を、日本郵船がレベル3を取得。なおユニリーバ、BHPビリトン、エーオン含む7社は、TPIが定める19の指標を全て満たす最良企業として評価された。昨年に比べると、165社(62%)が同じレベルを維持、79社(29%)がレベルを1つあげ、24%(9社)がレベルを1つ下げた。
「排出パフォーマンス」「マネジメントの質」を地域別でみると、ともに最も高評価を得たのは欧州。「排出パフォーマンス」では36%の企業が「2℃」および「2℃未満」に抑える取り組みをしている。また「マネジメントの質」の平均スコアはレベル3.4で、63%の企業が最高レベルの4を取得した。
一方の日本企業は、パリ協定での国別目標と整合性の企業は40%と多かったが、「2℃」および「2℃未満」に抑える取り組みをする企業は全体の10%にとどまった。また「マネジメントの質」の平均スコアはレベル2.6と低かった。日本の状況では、政府目標に準ずる方針をとっている様子が伺え、日本企業が世界をリードするためには、政府が国際的なリーダーシップを発揮できるかが鍵となることがあらためて浮き彫りになった。
【参照ページ】State of transition 2020: Over 80% of companies remain off track for a 2°C world
【レポート】TPI State of Transition Report 2020
Sustainable Japanの特長
Sustainable Japanは、サステナビリティ・ESGに関する
様々な情報収集を効率化できる専門メディアです。
- 時価総額上位100社の96%が登録済
- 業界第一人者が編集長
- 7記事/日程度追加、合計11,000以上の記事を読める
- 重要ニュースをウェビナーで分かりやすく解説※1
さらに詳しく ログインする※1:重要ニュース解説ウェビナー「SJダイジェスト」。詳細はこちら