国連責任投資原則(PRI)は2月1日、1月6日のトランプ前大統領支持派による米連邦議会議事堂侵入事件を受け、機関投資家に対し、ガバナンス問題として、投資先企業の政治献金の動向に関心を払うよう呼びかけた。
米国では、企業等が選挙支援のために政党や政治家に直接献金することは禁止されており、通常は政治活動委員会(PAC)と呼ばれる政治資金団体を介して、政治献金を行っている。また、PACから政党や候補者への献金額については法律により、候補者のPACへは年間5,000米ドル、政党のPACへは15,000米ドルとの上限が定められているが、政党や候補者とは直接関係なく設立されたPACであれば募集する献金に制限はなく「スーパーPAC」と呼ばれている。スーパーPACは、政党への投票呼びかけができないため、基本的には反対政党や反対候補者のネガティブ・キャンペーンを行っている。
【参考】【アメリカ】金融大手6社、政治献金停止発表。連邦議会議事堂暴動が背景。共和党献金のみ停止の企業も(2021年1月13日)
米国では、すでに、大統領選挙人による投票結果を否認した連邦議会議員147人に対する政治献金を停止した企業が続出している。当該企業には、モルガン・スタンレー、ダウ、アメリカン・エキスプレス、マリオット・インターナショナル、シティグループ、マスターカード、AT&T、デロイト、ファイザー、Airbnb、アマゾン、ベライゾン、インテル、GE、ディズニー、オラクル、KPMG、ウォルマート、PwC、NIKE、S&Pグローバル、BASF、サノフィ、シスコ等。
一方で、民主党も含めた全ての政治献金を停止した企業には、ヒルトン、キャピタル・ワン、ボーイング、マクドナルド、マイクロソフト、3M、ADM(アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド)、アメリカン航空、EY、ウェルズ・ファーゴ、アクセンチュア、チャールズ・シュワブ、フェイスブック、ブラックロック、コカ・コーラ・カンパニー、JPモルガン・チェース、BP、ノボ・ノルディスク、GM、ロッキード・マーティン等がある。
PRIは、政治献金を停止した企業は、レピュテーションリスクの観点だけでなく、大統領選挙のプロセスを否認するという重大な価値に対する脅威とみなしていると述べた。
PRIは今回、企業が、適切なガバナンスフレームワークを欠く形で、透明性低く政治献金を行う行為は、法的リスクだけでなく、企業のESGに対するスタンスをなし崩しにしてしまうリスクを孕んでいると指摘。民主主義の不安定化や、民主主義に対する不信を、社会的な一体感の喪失を招くと警鐘を鳴らした。
PRIは、機関投資家の役割として、政治献金の透明性向上に目を向けるべきと問題を提起。実際に株主提案では、政治献金の情報開示に関する議案に対し、2017年の賛成票平均25%から、2020年には40%にまで上がってきていることを紹介した。その上で、ESG投資の中に、政治献金についてもテーマとして組み入れ、適切なエンゲージメントや議決権行使を呼びかけた。
【参照ページ】Capitol riots: a call for investors to rethink corporate political donations
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