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【EU】欧州議会、欧州委のFit for 55で規制内容のさらなる強化要請。国境炭素税の前倒しも

 欧州議会は6月8日、欧州委員会が採択した包括的気候産業規制「Fit for 55」の方針を審議。一部は賛成、一部は検討不十分として欧州議会議会委員会に差し戻した。賛成議案は、EU理事会との調整に入る。

【参考】【EU】欧州委、包括的気候産業規制「Fit for 55」採択。国境炭素税も盛り込む。大企業賛同(2021年7月15日)

 まず、EU加盟国に対し拘束力のある二酸化炭素排出削減量を設定しする「努力分担規則」を賛成437、反対142の賛成多数で支持。また、EU全域での2030年削減義務を現行の30%から40%へと引き上げることも支持。これにより、EUの全加盟国は初めて、10%から50%の範囲で排出量を削減することが義務化される。加盟国が義務的削減量を超えた場合に、翌年に排出枠を積み立てることができる限度額も引き下げることを求めた。

 乗用車と小型自動車の新車販売を2035年までに全てゼロエミッションにする政策は、賛成339、反対249の賛成多数で支持。二酸化炭素排出量の暫定目標では、乗用車で2021年比55%減、バンで50%減と調整する。

 土地利用、土地利用変化、林業(LULUCF)での二酸化炭素吸収目標を2030年に57%増の3億1,000万tにまで引上げる議案、賛成472、反対124の賛成多数で支持。2026年から2030年まで、森林火災党によって年間目標に達しなかった加盟国が利用できる「自然障害メカニズム」の設置も提案した。一方、農業部門の排出量に関しては別途設定すべきとする立場も採択した。

 航空部門では、EUの航空分野の排出量取引制度(ETS)を改定する報告書を賛成479、反対130の賛成多数で採択。欧州経済領域(EEA)内の空港から出発する全便にETSを適用し、航空部門への無償割当は2025年までに段階的に廃止すべきとした。但し、大西洋にあるEU法の適用を受ける欧州連合の外部に存在する地域(outermost regions)に関しては、EEA空港との便もしくはoutermost regins間の便に関しては適用を除外する。航空部門のETSからの収入は、75%をイノベーションと新技術支援に充当することも決めた。

 一方、ETS改革に関しては、欧州委員会の内容は緩いとしてさらなる厳格化を求めた。具体的には、欧州委員会の原案では、2030年までにETS対象セクターの排出量を61%削減することを提案。そのため、ETS対象セクターへの排出上限量の引下げ、無償割当と市場安定化リザーブ(MSR)の規則改定、海上輸送のETS対象化、不動産と道路輸送での独立した排出量取引制度の創設が盛り込まれていた。

 これに対し、欧州議会は、EU炭素国境調整メカニズム(国境炭素税)が完全に開始される2030年までに無償割当を廃止することを提案。家庭ごみ焼却のETS対象化も求めた。ETSからの収益は、全額気候変動対策のために投じることも求めた。但し、不動産との道路輸送の新設ETSでは、家庭用のエネルギーコスト増を避けるため、商業道路輸送のみを対象とした上で、2029年以降の開始を求めた。これに付随して、欧州委員会の案では、家庭や中小企業支援のため2025年から2032年にかけて720億ユーロの予算の社会気候基金を設立することが盛り込まれていたが、採決は見送られ、一緒に委員会に差し戻された。

 炭素国境調整メカニズムに関しては、欧州委員会の原案では、欧州議会環境委員会が5月17日に採択した報告書の中で、対象品目にアルミニウム、水素、化成品等を含めることや、スコープ2の排出量も対象とするよう勧告していることを支持し、同メカニズムの開始時期を前倒し、2年間の移行期間を設けた上で2023年1月1日から開始。2030年までにETSの全セクターに拡大することも求めた。また、同メカニズムに関する権限は、EU加盟国ではなく、EUに一元化することも求めた。

【参照ページ】Fit for 55: MEPs want stricter rules for member states’ greenhouse gas emissions
【参照ページ】Fit for 55: PE supports zero emissions for cars by 2035
【参照ページ】Fit for 55: Parliament agrees to higher EU carbon sink ambitions by 2030
【参照ページ】Urgent action needed to reduce emissions in the aviation sector
【参照ページ】The EU Emissions Trading Scheme (ETS) and its reform in brief
【参照ページ】Social Climate Fund: Parliament’s ideas for a just energy transition
【参照ページ】Carbon leakage: prevent firms from avoiding emissions rules

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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