英環境・食料・農村地域省は1月5日、持続可能な農林を営む農林家への新たな助成金制度を発表した。支援金額を増やすことで、農家への農法転換を促していく。
英政府は、2030年ネイチャーポジティブ、2050年カーボンニュートラルを実現することを政策として掲げており、2027年頃までに新たな農業補助金制度を段階的に導入していく。今回の政策も、生態系や生物多様性を向上する農業を重視した。
英国では、2022年から持続可能な農業奨励金(SFI)が導入されており、排水改善、生物多様性、二酸化炭素排出量削減、動物福祉等を、持続可能な農業と定め、農家に助成している。助成支給は、申請参加が前提となり、園芸農業地では、初級レベルで1ha当たり22ポンド、中級レベルで同40ポンド。草地では初級レベルで同28ポンド、中級レベルで同58ポンド。ムーア(酸性土壌の荒地)では、初級レベルで同10.30ポンド、また年間で追加で265ポンド。
今回の発表では、SFIの助成金額を1ha当たり20ポンド、年間最大1,000ポンド(約16万円)まで増額する。支給は、最初の50ha分の申請までが対象で、特に中小企業での適用を促す。拡大基準はまもなく詳細発表される。
次に、イングランド地方の農家については、別途「カントリーサイド・スチュワードシップ(CS)」として合計8つの助成金も用意しており、助成金額を拡充した。まず、境界線、樹木、果樹園、水質、大気の質、自然洪水管理に関しては3年間の設備投資助成金で、SFRIに参加している農家は、SFI適用外の農地でも申請が可能。それに上乗せする形で、環境便益に対しては、第2段の助成金も支給される。
さらに森林管理の改善では「プロテクション&インフラストラクチャー助成金」が、10年という長期間の森林計画策定では、英国林業規格(UKFS)に準拠すると単発助成金が獲得できる。樹木の健康状態に問題がある森林の再植林や改善した場合には「ウッドランド・ツリー・ヘルス補助金」が、生態系保全では「実施計画(PA1)助成金」と「フィージビリティ調査(PA2)」助成金が受けられる。
カントリーサイド・スチュワードシップの支援の一例では、ミツバチ等の送粉者が草地から別の圃場へ移動できるようにする草地帯の整備では、1ha当たり658ポンドが、冬に鳥の餌となる種子ミックスを短冊状に播種し、野生生物が年間を通じて農場に留まるよう促し、高価な人工肥料の必要性を減らす農法では、1ha当たり732ポンドが助成される。こうして、生態系と一体型の農業を促進する。単発の助成金では助成金額が平均48%増、継続助成金でも平均10%増となった。
イングランド林業公社(EWCO)とツリー・ヘルス・パイロット(THP)の設備投資助成金と年間維持助成金も改定され、農家が貴重な天然資源としてより多くの樹木を農場に取り入れるインセンティブとなるよう支援する。
英国政府は今回、EU離脱による農業補助金改革の成果を強調。EU制度下では、農業補助金は、農地面積に応じた支給が原則のため、補助金の半分が上位10%の農家に支給されていたことを問題視し、今回の英国独自の制度では、幅広い農家に資金が行き渡るようにしたとした。
【参照ページ】Government to pay more to farmers who protect and enhance the environment
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