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【EU】欧州委とEU外相、宇宙と海洋で新安全保障戦略発表。サステナビリティ概念も導入

 欧州委員会とEU外務・安全保障政策上級代表(EU外相)は3月10日、安全保障上の新戦略として宇宙領域では初となる声明として「EU安全保障と防衛のための欧州宇宙戦略に関する共同声明」を、海洋領域では改訂の方向性を示す「EU海洋安全保障戦略の強化に関する共同声明」を発表した。新たな脅威への対抗策を決めた。

 EUの安全保障政策では、2022年3月に「戦略的コンパス」を正式に採択。2030年までの安全保障・防衛政策を強化するための野心的な行動計画の策定を欧州委員会とEU外相に対し指示していた。その中で、サイバー、宇宙、海洋の3つが重点テーマとして置かれていた。

EU安全保障と防衛のための欧州宇宙戦略

 まず、「安全保障と防衛のための欧州宇宙戦略に関する共同声明」では。宇宙領域での方向性を確定。近く加盟国に対し初期段階のアクションを提示。EU理事会で年1回報告していくことを決めた。欧州には、1975年に10か国が共同創設した欧州宇宙機関(ESA)があり、現在は22ヶ国が加盟しているが、活動領域は宇宙の平和利用に限定。安全保障や防衛での宇宙利用については、欧州各国政府の領域となっている。今回はEUとして欧州宇宙戦略を掲げ、非平和利用の分野での欧州共通政策を掲げてきた形。

 今回掲げた戦略では、宇宙システムおよび地上インフラにとって脅威となる分野を概説。特に宇宙及び地上に対する破壊、妨害、傍受等の平和的利用阻害行為を指す「カウンタースペース」の概念を強調した。カウンタースペースについては、毎年、米宇宙シンクタンクSecure World Foundation(SWF)が報告書を公表している。

 その上で、宇宙システムおよびサービスのレジリエンスと保護の強化、宇宙空間の脅威への対処、安全保障と防衛のための宇宙利用、国際パートナーシップの4つでアクション分野を定めた。

 レジリエンスと保護の強化では、宇宙における安全、安心、サステナビリティのための共通枠組みを提示し、EU宇宙法の制定についても検討。さらに、情報共有・分析センター(ISAC)を設立し、官民に対するナレッジハブとして機能させる。また、EUの宇宙への自律的アクセスを長期的に確保するための準備を開始し、特に安全保障と防衛のニーズに対処する。欧州防衛庁やESAとの連携も掲げ、サプライチェーン全体を踏まえたEUの技術的主権の強化も盛り込んだ。

 宇宙空間の脅威への対処では、EUの関連政策分野を動員するための具体的な方策を説明。現在は人工衛星「ガリレオ」の保護のために使用されている既存の宇宙脅威対応メカニズムをEU内のすべての宇宙システムおよびサービスに拡大することや、各国の宇宙当局の識別情報にアクセスできるようにし、不審な動きを検知しやすくしEU資産を保護することを盛り込んだ。共同演習も実施する。

 安全保障と防衛のための宇宙利用では、防衛上の要件を明確にすることで、デュアルユース(軍民両用)サービスの開発促進につなげる。具体的には、加盟国の能力に応じた初期の宇宙領域識別サービスの実証と、ESAが運用する地球観測人工衛星「コペルニクス」の発展形として新しい地球観測政府サービスの提供を進める。EU加盟国間での研究開発情報の共有や、スタートアップの育成、スキル開発等も掲げた。

 国際パートナーシップでは、米国及び北大西洋条約機構(NATO)との連携を重視。多国間フォーラムを通じ、宇宙空間における責任ある行動に関する規範、ルール、原則の策定を促進するとした。

EU海洋安全保障戦略

 「EU海洋安全保障戦略の強化に関する共同声明」では。2014年に策定したEU海上安全保障戦略の改定案を表明。海洋領域での方向性を確定した。海運、海上資源採掘、海底ケーブルが脅威にさらされる可能性があるとし、民生・軍事の両面から、海洋の安全保障を推進するためのオプションを強化するとした。今後、EU理事会で審議し、各加盟国に同戦略を実施を求めにいく。欧州委員会と上級代表は3年以内に進捗報告書を作成する。

 戦略改定では、海洋のサステナビリティと生物多様性保護を確保しつつ、国際平和と安全、国際ルールと原則の尊重を促進。それに基づき、気候変動と海洋環境の悪化、ハイブリッド攻撃やサイバー攻撃等、新たな脅威に対処していく。

 同時に2018年の改定が最後なっている行動計画の改定も進める。具体的には重要分野として6つを掲げた。まず、EUレベルでの海軍演習や、沿岸警備隊の活動強化、2021年1月から開始されたCoordinated Maritime Presence(CMP;特定の海域に存在するEU加盟国の海軍・航空部隊の連携)を展開する新たな海域関心領域の指定、EU港湾での保安検査強化等。

 2つ目は、EUとNATOの協力深化等の国際パートナーシップ。3つ目は警備のための海域識別共通データベースの構築。4つ目は、制服組と背広組の双方が参加する定期的な海上実戦演習の実施、重要な海上インフラと船舶の物理的・サイバー的脅威からの監視・保護等のリスクマネジメント。5つ目が防衛技術能力強化。最後が、背広組によるハイブリッドおよびサイバーセキュリティの要件強化。

【参照ページ】An EU Space Strategy for Security and Defence to ensure a stronger and more resilient EU
【参照ページ】Maritime Security: EU updates Strategy to safeguard maritime domain against new threats
【参照ページ】A Strategic Compass for a stronger EU security and defence in the next decade
【参照ページ】Global Counterspace Capabilities Report

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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