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【国際】WBCSD「削減貢献量算出ガイダンス」発行。企業やプロジェクトに活用条件設定

 持続可能な発展を目指すグローバル企業団体WBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)は3月22日、削減貢献量(Avoided Emissions)の算出・報告に関するガイダンスを発行した。

【参考】【国際】WBCSD、削減貢献量ガイダンスを2023年初旬発行へ。COP28の場で年次総会(2022年11月15日)

 同ガイダンスは、スコープ1から3までの削減を進めた上で、さらなる上流サプライチェーンまたは下流サプライチェーンでの気候変動緩和の手法として、削減貢献量を位置づけた。日本ではスコープ3排出量を削減貢献量で相殺できると見るべきという考えもあるが、そのような考え方は今回明確に否定された。情報開示でも排出量と削減貢献量は明確に分けるよう明記された。

【参考】【日本】三菱重工、2040年カーボンニュートラル目標発表。削減貢献量含みで国際ルールに従わず(2021年10月30日)

 同ガイダンスは、製品、サービス、プロジェクト等の単位での削減貢献量の算出を想定している。また、金融サービスや資金支援を通じた削減貢献量の算出は扱っていない。また、炭素除去(CDR)についても対象外とし、削減貢献量とCDRの量は別々に報告することも規定した。デジタルサービス、ナッジ、広告、アドバイザリー等による削減貢献については今回は対象外とし、今後のガイダンス改訂で検討する予定とした。

 削減貢献量を算出し報告する企業に対しては「適格性ゲート」という概念を設定。3つのゲートを満たす必要があるとした。まず、報告を行う組織(企業)自身が、最新の気候科学と整合性のある気候戦略と、スコープ3を含む科学的根拠に基づく削減目標を設定し公表していることが条件。すなわち戦略や削減目標の設定ないし、削減貢献量のみを報告するという考え方を否定した。科学的根拠に基づく削減目標では、科学的根拠に基づく削減目標イニシアチブ(SBTi)のネットゼロ・スタンダードや、Race to Zero基準、国際エネルギー機関(IEA)の「ネットゼロ2050(NZ2050)シナリオ」等を挙げた。

 2つ目のゲートは、最新の気候科学に基づき、当該プロジェクト等が気候変動緩和の可能性があると認められていること。こちらの参照基準としては、IPCCの第6次評価報告書(AR6)の第3部会(WG3)報告書やEUタクソノミーを挙げた。さらに、石油、天然ガス、石炭の探査、抽出、採掘、生産、流通、販売に関わる活動に直接適用するものは適格性から一律除外される。加えて、1.5℃の世界に通用するソリューションを対象としているため、過渡期的な技術やプロジェクトで削減貢献量を主張することも却下した。この要件から、高効率火力発電等での削減貢献量の訴求は難しくなる。

 3つ目のゲートは、直接大きな削減効果をもたらすこと。同要件では、イノベーションを奨励し、グローバルにカーボンニュートラルを達成するために必要なソリューションをスケール化することを期待している。また波及的に削減効果が生まれるものについては算出対象から除外すべきとした。

 削減貢献量そのものの算出では、ソリューションが実行されなかった場合のシナリオを参照基準(リファレンス)として設定し、それとの差分を算出することことを明確化。時間軸では、当該プロジェクトや技術、製品のライフサイクル全体の削減貢献量を一括計算する手法「フォワード・ルッキング型」と、販売時から製品耐用終了時まで削減貢献量を毎年計算する手法「イヤー・オン・イヤー型」の2つを提示した。特に、B2Cで訴求する場合は「フォワード・ルッキング型」、B2Bで訴求する場合には「イヤー・オン・イヤー型」を推奨した。イヤー・オン・イヤー型については、毎年実績ベースで計算できるため、リファレンス・シナリオの未来予測は不要となる。

 参照シナリオの設定では「平均的なソリューション」が重要概念となる。例えば、顧客需要の高まりを見越しソリューションを提供する場合には、かつての需要ではなく、想定している新規需要を織り込む必要がある。既存インフラの改善や、リプレースに関しても、想定の置き方を整理した。

 複数の企業が、同様のプロジェクトから削減貢献量を主張する「二重計上(ダブルカウント)問題」については、許容されるとした。全体としての算出の整合性よりも、削減アクションが加速することそのものに重きを置いた。但し、企業単位で削減貢献量を合算し開示する場合には、同一企業内でのダブルカウントは避けなければならないとした。

 同ガイダンスの策定は経済産業省を始めとした日本の官民が強く求めていた。しかし、スコープ3排出量の相殺や、高効率の化石燃料利用については訴求ができないという結果となり、望んだ通りの内容にはならなかったと言える。

【参照ページ】New avoided emissions guidance provides companies with a credible way to assess the decarbonizing impact of their solutions

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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