国際再生可能エネルギー機関(IRENA)は3月28日、1.5℃シナリオ達成に向けた世界のエネルギー転換の現状を概説した報告書を発表した。エネルギー転換のため、各国のアクションの根本的な軌道修正を呼びかけた。
今回の発表は、世界のエネルギー転換に向けた現状を分析したもの。2023年4月に札幌市で開かれたG7気候・エネルギー・環境相の会合の場でも発表された。今後、国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)の場で、2030年に向けた今後5年間のアクションを加速させる方法を提案する報告書を発表予定。
【参考】【国際】G7環境・エネルギー相会合、天然ガス促進盛り込まれず。化石燃料段階的廃止も時期示せず(2023年4月17日)
今回の発表では、ポジティブな内容として、電力セクターでは、再生可能エネルギーが世界の発電設備容量の40%にまで達し、2022年の新規設備容量のうち83%が再生可能エネルギーとなったことを報告した。
【参考】【国際】再エネ、2022年の新規設備容量の83%占める。発電量もシェア12%にまで上昇(2023年4月14日)
しかし、1.5℃シナリオを達成するには、世界の再生可能エネルギー発電容量を現在の約3,000GWから、2030年までには1万GW以上、年平均1,000GWの新規設備容量を追加する投資水準まで引き上げる必要がある。再生可能エネルギーの導入は地域格差が大きく、発展途上国では導入が遅い。
IRNEAは、1.5℃シナリオでは、発電量に占める電源構成が、2050年には再生可能エネルギー91%、原子力発電4%、火力発電5%と見立てている。
また、国別削減目標(NDC)、長期低排出開発戦略、ネットゼロ目標等の気候変動に関する公約は詳細な国家戦略や計画に反映されておらず、IRENAの各国のエネルギー目標や計画をベースとした計画的エネルギーシナリオでは、二酸化炭素排出量のギャップは2050年までに35Gt達すると予測している。1.5℃シナリオ達成に向けた主要なエネルギーシステムの達成状況もすべて進捗が遅れている。
(出所)IRENA
同報告書では、エネルギー転換技術に関する投資の量と種類を抜本的に変更することを訴えた。目標達成に向けた必要な年間投資額は現在の4倍の5兆米ドル(約670兆円)以上に、2030年までの累積投資額は現在の計画値に15兆米ドル(約2,000兆円)を追加投資して44兆米ドル(約5,900兆円)に、2050年までに現在の計画値に47兆米ドル(約6,300兆円)を追加して150兆米ドル(約2京円)にする必要がある。移行技術に関する投資は全体の80%の35兆米ドルとなり、電化、グリッドの拡張や柔軟性に対し優先的に投資が必要とした。
加えて、より公平な方法で各国に投資を誘導するために公共部門の介入の必要性を主張。2022年の世界の再生可能エネルギー投資の85%は世界人口の50%未満を対象にした投資だった。アフリカでの投資額は全体の1%程度であり、発展途上国や新興国への投資が不足している。
また、エネルギー転換に向けた3つの優先的な柱「物理的なインフラ」「政策と規制の強化」「熟練した労働者」を掲げた。物理的なインフラでは、再生可能エネルギーの開発、貯蔵、流通、消費を促進するため陸海空のインフラの近代化や拡張を訴えた。政策と規制の強化では、再生可能エネルギーに基づくエネルギーの統合や取引と公平性を促進するための政策と規制の枠組みが必要とした。労働者の観点では、エネルギー転換を推進するための必要な技能、知識を習得するためのコミュニティや教育への投資を拡充するだけではなく、労働者の権利や利益を十分に享受できるようにすべきだとした。
【参照ページ】Investment Needs of USD 35 trillion by 2030 for Successful Energy Transition
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