国際エネルギー機関(IEA)は11月23日、国連気候変動枠組条約第28回ドバイ締約国会議(COP28)に先駆け、石油・ガスセクターのカーボンニュートラル転換に関する特別報告書を発行した。炭素回収・利用・貯留(CCUS)に依存することはできず、石油・ガスセクターは、カーボンニュートラル達成の上で岐路に立たされているとした。
IEAは今回、最新の予測として、現行政策下でも、世界の石油・ガス需要は2030年までにピークアウトすると指摘。世界で気候変動への対策が強化されれば、需要はさらに現象すると見立てた。
また、各国政府がエネルギー転換と気候変動に関するコミットメントを完全に履行すれば、需要は2050年までに現在の水準比で45%減少すると予測。1.5℃目標達成のパスウェイでは、石油・ガスの需要は2050年までに75%以上減少することになる。
一方、世界のエネルギー供給の半分以上を供給し、世界中で約1,200万人を雇用している石油・ガスセクターは、エネルギー転換を本気で進めていないと警告。世界のクリーンエネルギー投資に占める石油・ガス企業の割合はわずか1%しかなく、そのうちの6割をたった4社でカバーしているという。
IEAは今回、石油・ガスセクターの中でも、とりわけオイルメジャーと呼ばれる民間エネルギー大手に注目が集まりがちだが、オイルメジャーが所有する石油・ガス生産量と埋蔵量は世界全体の13%にも満たないと伝え、それ以外の各国の国営石油・ガス企業や、中小のプレイヤーにも注目すべきと言及した。現状では、自社の排出量を削減する目標を掲げている石油・ガス企業は、石油・ガス全世界生産量の半分にも達していない。
1.5℃パスウェイでは、長期の石油・ガスプロジェクトをゼロにしなければならず、一部の採掘は中止する必要がある。しかし、現在、石油・ガス資源には年間8,000億米ドルが投資されており、1.5℃パスウェイで必要としている金額の2倍にもなる。他方、各国のエネルギー転換・気候変動目標が達成された場合、石油・ガス会社の企業価値は、現在の6兆米ドルから25%も下落し、1.5℃パスウェイ達成では最大60%も下落する可能性があるという。
エネルギー大手が期待するCCUSについては、石油・ガス採掘を続け、1.5℃目標をCCUSで達成しようとした場合、炭素回収だけで、現在の全世界電力の総需要を上回る電力が必要になるため、現実的ではないとした。
【参照ページ】Oil and gas industry faces moment of truth – and opportunity to adapt – as clean energy transitions advance
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