
14ヶ国が加盟するインド太平洋経済枠組み(IPEF)は6月6日、シンガポールで閣僚級会合及び投資家フォーラムを開催。IPEFクリーンエコノミー協定、IPEF公正な経済(フェア・エコノミー)協定、IPEF協定の3つの署名式が実施された。
IPEFは、「貿易」「サプライチェーン」「クリーンエコノミー」「公正な経済(税制・腐敗防止)」の4分野を協定締結分野として設定しており、2023年11月にIPEFサプライチェーン協定が締結。今回、IPEFクリーンエコノミー協定とIPEF公正な経済(フェア・エコノミー)協定が締結された。同時に、IPEF全体の枠組みを規定するIPEF協定も締結された。
【参考】【国際】IPEF、サプライチェーン協定締結。人権を規定。クリーンエコノミーと公正な経済も進展(2023年11月16日)
IPEFは2023年11月にクリーンエコノミー協定とフェアエコノミー協定に関する概要で合意。さらにクリーンエコノミー協定については、内容をさらに詰めた最終内容を2024年3月に発表していた。
【参考】【国際】IPEF、クリーンエコノミー協定と公正な経済協定の概要公表。加盟国での強化分野明記(2023年11月19日)
【参考】【国際】IPEFクリーンエコノミー協定、再エネに30兆円、バッテリーに18兆円。持続可能な農業も(2024年3月16日)
IPEFクリーンエコノミー協定では、適用範囲として、エネルギー安全保障及びエネルギー移行、工業部門と運輸部門の温室効果ガス低排出、持続可能な土地・水・海洋、二酸化炭素回収・除去を定め、それに関連したインセンティブや公正な移行についても定めている。全体的には、加盟国政府の権利や義務ではなく、各々の分野で進めていく方向性について合意し、相互に協力していくことを謳う内容となっている。
エネルギー安全保障及びエネルギー移行では、クリーンエネルギーの貯蔵のために全体で1,200億米ドル以上、再生可能エネルギーに各地域で200億米ドル以上の投資促進を目標として設定。エネルギー部門でのメタン排出を2030年までに削減していくことも掲げ、廃棄物発電の技術をメタン削減の手段として用いることも盛り込んだ。海運では、2027年までに各地域でグリーン海運回廊を5ヶ所以上設置することを開始することも掲げた。自動車については、乗用車及びバンで、新車販売に占めるゼロエミッション車の割合を2030年までに50%以上にすることに「寄与する」ことでも合意した。炭素回収・利用・貯留(CCUS)では、2030年までに各地域で100億米ドルから150億米ドルの投資促進も盛り込んだ。
IPEFクリーンエコノミー協定では、各国の関心事の違いを考慮し、「関心を有する国では」という文言が随所に登場する。例えば、水素、アンモニア、メタノールの燃料利用、石炭火力発電のバイオマス混焼や廃棄物混焼、原子力発電、CCUS、地域におけるエネルギーの相互接続等は、選択肢として採りうるという表現になっている。
今回は同日にIPEFクリーンエコノミー投資家フォーラムも開催し、政府関係者、投資家、企業、スタートアップが集まった。事業者から投資家には総額約60億米米ドルの投資対象プロジェクトの発表があり、全体では優先すべきインフラ事業として230億米ドル以上の案件が共有された。スタートアップでは、HolonIQ の第1回「インド太平洋クライメートテック100」に参加した約半数のスタートアップが投資家にピッチを行い、最大20億米ドルの新規資金計画を話した。
米国、日本、韓国、オーストラリアが総額3,300万米ドルを拠出した「IPEFカタリティック・キャピタル・ファンド」の運営も開始した。レバレッジ100倍で最大33億米ドルの民間投資の動員を目指す。同ファンドの運用は民間インフラ開発グループ(PIDG)が担う。
さらに、IPEF加盟国の協力作業計画(CWP)の仕組みを通じ、すでに発足している水素、カーボン市場、クリーン電力、SAF、公正な移行に加え、原単位排出量算定、都市鉱山、小型モジュール炉の3つのCWGが新たに発足した。
IPEFフェアエコノミー協定では、対象範囲として腐敗防止と税政を設定。腐敗防止条約(UNCAC)をベースとして、公務員に対する賄賂の禁止や司法協力で合意した。企業に対しても、コンプライアンスや内部統制の強化を促す内容も盛り込んだ。税政では、各国が租税能力を確保できるよう支援していくという内容になっている。
今回の会合では、2022年9月に発足した「IPEFアップスキリング・イニシアチブ」の進捗状況も共有された。同イニシアチブは、主にIPEF加盟国の新興国・中所得国の女性と女児にデジタルスキルをトレーニングする機会を提供している。加盟しているのは、アマゾン、AWS、アップル、グーグル、マイクロソフト、IBM、HP、シスコシステムズ、デル・テクノロジーズ、VISA、マスターカード、PayPal、セールスフォース、エデルマン・グローバル・アドバイザリーの14社とアジア財団。10年間でスキルアップ機会700万件の提供を掲げており、過去2年間ですでに1,090万件を提供し、目標を上回っている。
【参照ページ】辻󠄀外務副大臣のインド太平洋経済枠組み(IPEF)閣僚級会合等への出席 (結果概要)
【参照ページ】Press Statement on Indo-Pacific Economic Framework for Prosperity Ministerial Meeting in Singapore
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