米商務省は11月16日、14ヶ国が加盟するインド太平洋経済枠組み(IPEF)閣僚会議の共同声明を公表した。IPEFクリーンエコノミー協定、IPEF公正な経済協定、繁栄のためのIPEFに関する協定の3つの交渉が実質的に完了したと宣言した。これで先に協定が完成し、IPEFサプライチェーン協定を合わせ、4つの柱のうち3つで妥結した形。同日には、初のIPEF首脳会合も開催された。
【参考】【国際】IPEF、サプライチェーン協定締結。人権を規定。クリーンエコノミーと公正な経済も進展(2023年11月16日)
IPEFの現在の加盟国は、米国、日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド、シンガポール、インドネシア、タイ、マレーシア、フィリピン、ベトナム、ブルネイ、フィジーの14ヶ国。「貿易」「サプライチェーン」「クリーンエコノミー」「税制・腐敗防止」も4分野を協定締結分野として設定している。今回各協定の概要も明らかにした。後日、正式な協定文を作成し、加盟国の署名式を行う見込み。
IPEFクリーンエコノミー協定
同協定では、IPEF加盟国の協力分野を定めている。
- 多様なクリーンエネルギー及び気候変動フレンドリー技術の研究・開発、商業化、利用可能性、アクセス可能性、手頃な価格、および展開を加速する
- インフラ、技術、相互に承認された基準、方法論、認証に関する協力を通じ、国境を越えた事業活動を促進するため、地域における相互接続を強化する
- 地域のサプライチェーンの課題と脆弱性について理解を深め、クリーンエネルギー技術で重要な鉱物や材料を含む重要な投入物の、より多様で持続可能な供給源を確保することにより、我々の市場全体のクリーンエネルギー・サプライチェーンを強化する
- 高品質で信頼性が高く、経済的に実行可能な電力網やミニグリッドの開発を支援することを含め、再生可能エネルギー、省エネ、エネルギー保全を促進する
- 特にエネルギー部門における費用対効果の高い対策を通じ、2030年までに世界の人為起源メタン排出量を削減する
- パートナーが採用している様々なパスウェイに留意しつつ、グリーン輸送回廊の確立、持続可能な航空燃料(SAF)の生産と利用可能性の増加、ゼロエミッション輸送を支援するインフラと車両の拡大による陸上交通部門のカーボンニュートラル化等を通じ、輸送部門のカーボンニュートラル化もしくは気候インパクトを低減する。
- イノベーティブなクリーン技術を統合し、クリーンエネルギーのサプライチェーンを促進し、脱炭素化プロジェクトに取り組む経済クラスターを域内で特定、促進する
- 排出量を削減し、生産性を向上させ、気候変動影響に適応するために、革新的な政策、ツール、技術を通じ、持続可能な農業慣行を推進する
- 森林やその他の自然生態系の持続可能な管理、保全、再生を強化し、インド太平洋地域から製品を調達する企業との協働を含め、森林減少・劣化の要因に対処し、これらの活動を促進するために必要な条件を整備する
- 投資を促進し、研究開発を促進し、法的・規制的枠組みを強化し、地域的・国際的な炭素回収・利用・貯留(CCUS)バリューチェーンの開発と安価なアクセスについて協力し、国際的な測定・報告・検証(MRV)に関する情報を共有することにより、温室効果ガス除去技術のコストを引き下げるための措置をとる
- 気候変動適応・緩和を進展させるため、持続可能な水ソリューションと、自然を軸としたソリューション(NbS)や生態系ベースのアプローチとみなされる海洋ベースの解決策を促進するための行動を加速させる。これには、海洋ベースのクリーンエネルギー・サプライチェーンの開発と統合、水の再利用とリサイクルを目指す水関連の気候解決策に関する協力、ブルーカーボンの保護と回復を強化するためのベストプラクティスの共有等が含まれる
- 民間部門との緊密な協力、潜在的な非関税障壁の削減、ビジネス環境の明確化と確実性の向上、資金的インセンティブの促進等を通じ、低排出またはゼロエミッションの商品やサービスの供給と需要を強化する
- サプライチェーンが検証された低炭素またはゼロエミッションの電力の調達を確保したい企業の意向を認識する
- カーボンクレジット認証基準、炭素市場への参加のためのキャパシティビルディング、民間部門を含む国際炭素市場で信頼できる需給を生み出すための質の高い緩和活動を促進するための協力などの問題で協力することにより、炭素市場の発展と炭素市場への関与においてパートナーと協力する
- 気候変動に関連する金融リスクを測定・管理することが、気候変動の影響から国民と経済を守ることにつながることを認識する
- 労働力開発を促進するための教育・訓練、低コストの気候変動技術の研究開発、インフラ近代化の支援などの分野を含め、クリーンエコノミーへの移行においてパートナーを支援するための技術支援と能力構築の機会を提供する
- IPEF加盟国がクリーンエコノミーへ移行し、質の高い雇用とディーセント・ワークを創出するための政策立案、労働者の権利、社会的保護、スキルアップとリスキリング、あらゆるレベルでの社会的対話に関連する行動を追求する中で、労働者と地域社会の公正な移行(ジャスト・トランジション)を支援する
- クリーンエコノミーへの移行を強化するために、先住民族や地域コミュニティと連携する
また同協定には、上記で掲げた分野への投資フローを拡大するための内容も盛り込まれた。
- サステナブルファイナンスとトランジションファイナンスの促進、イノベーティブな金融メカニズムの育成、安定的でよりシームレスな規制・政策環境の整備、資金調達のための様々なアプローチの相互運用性の促進、安全で強靭かつ多様なクリーンエネルギー・サプライチェーンの促進
- 譲許的資本の導入、ブレンデッド・ファイナンス・ストラクチャーの追求、保証とリスク保険、強固な労働権と環境保護に合致した技術支援、銀行融資可能な気候変動プロジェクトのパイプラインの開発、官民パートナーシップの形成等、資金調達へのアクセスを動員・拡大する
IPEFクリーンエコノミー協定では、2024年前半にシンガポールで第1回会合を開催。IPEFクリーンエコノミー投資家フォーラムも毎年開催する。また、IPEF加盟国は、銀行融資可能な気候変動プロジェクトのパイプラインを開発するため、民間インフラ開発グループが運営するIPEF触媒資本ファンドも設立する。
また個別分野で協調作業プログラム(CWP)も立ち上げ、第1号としてすでに5月に水素イニシアチブが発足している。他には、ブルーカーボン、サステナブルファイナンス、グリーン雇用の主流化、エンベッディド排出量会計(ライフサイクル排出量会計)、メタン削減、バイオ燃料、電子廃棄物、クリーン電力、カーボン市場、持続可能な航空燃料(SAF)等をCWPの候補とした。
IPEF公正な経済協定
同協定では、腐敗防止、マネーロンダリング、税透明性、労働者の権利の4つでの協力関係を規定している。
- 国連腐敗防止条約(UNCAC)及び、該当する場合には経済協力開発機構(OECD)贈収賄防止条約に基づく義務に合致した、国内外の贈収賄およびマネーロンダリングに関する措置を採択または維持し、効果的に実施する。加えて、適切な会計監査基準を確保することを含む腐敗犯罪を効果的に防止、検出、調査、訴追、制裁するための努力を強化する
- UNCACに合致した、犯罪収益の特定、追跡、凍結、押収、刑事・民事手続における没収を可能にする措置、回収された犯罪収益の返還および処分における透明性と説明責任を促進するためのその他の措置を採用または維持し、資産回収に関する国際協力を強化する
- 贈収賄を含む腐敗の防止及び撲滅のための民間部門の積極的な参加を促進し、贈収賄を含む腐敗の存在、原因、重大
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