
金融庁は8月30日、「2024事務年度金融行政方針」を公表。大規模な保険代理店に関する監督を強化する政策を打ち出した。
今回の政策は、損害保険会社によるビッグモーター保険金不正請求事案が発端。その中で、一部の損害保険会社が、保険代理店に対する実効的な教育・管理・指導が実質的に機能していなかったことが発覚していた。
【参考】【日本】SOMPOの社外調査委員会、ビッグモーター事案で中間報告書。ガバナンス問題も指摘(2023年10月11日)
そこで金融庁は、「損害保険業の構造的課題と競争のあり方に関する有識者会議」を設置。今回の金融行政方針は、同会議の報告書を踏まえ、大規模代理店に対する第三者による評価の仕組み整備、保険会社による自社商品の優先的な取扱いを誘引する便宜供与の解消、保険会社における適切な保険金支払管理態勢の確保、企業内代理店の実務能力の向上や自立の促進等について、監督指針の改正及び業界ガイドラインの策定・改正等を掲げた。
また、金融審議会において、大規模な保険代理店における態勢整備の厳格化、保険仲立人の活用促進、企業向け火災保険の赤字状況等の論点について、制度改正の必要性を含め、具体的な対応を検討することも盛り込んだ。
損害保険業界では2024年5月。東京海上ホールディングス傘下の東京海上日動火災保険、SOMPOホールディングス傘下の損害保険ジャパン、MS&ADインシュアランスグループホールディングス傘下の三井住友海上火災保険とあいおいニッセイ同和損害保険が、乗合保険会社に自動車保険加入者の氏名や契約内容を共有し、情報が競合他社に漏洩していたことを一斉に発表している。
同事案では金融庁は7月に報告徴求命令を発出。4社は8月30日に報告書を提出し、情報漏洩は4社で合計約250万件に上り、一部の情報は営業活動に使われていたこともわかった。情報漏洩のルートは、代理店から保険会社への一斉送信メールで、顧客情報が契約外の保険会社にも送信されていた。背景には、代理店内では、複数の保険会社の顧客情報が共有されていることが多く、代理店側で問題視されていなかったという重い事情もみえてきていた。
さらに、生命保険業界でも、第一生命ホールディングス傘下の第一生命保険が、代理店に出向中の社員により、他の保険会社の契約者情報約72,000件が情報漏洩されていたことも発覚。金融庁は、生命保険各社に対し、類似の事案がないか調査を進めている。
今回の金融庁の行政方針では、大規模代理店での個人情報の取扱も監督強化の対象になる可能性がある。
【参照ページ】2024事務年度金融行政方針について
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