
厚生労働省所管の国立医薬基盤・健康・栄養研究所の健康・栄養研究所は9月6日と7日、日本版の栄養プロファイリング・モデル(NPM)の1.0版を公表した。学術論文として、科学誌に掲載された。食品栄養の分野では、「健康的な食事」の定義として、公的機関による栄養プロファイリング・モデル(NPM)や栄養プロファイリング・システム(NPS)への準拠が提唱されており、日本としてもついに国立研究所によるNPMが整理された形となった。
今回発表されたのは、料理版のNPMを示した「Development of a Nutrient Profile Model for Dishes in Japan Version 1.0: A New Step towards Addressing Public Health Nutrition Challenges」と、加工食品版の「Development of a Nutrient Profiling Model for Processed Foods in Japan」の2つ。いずれも科学誌「Nutrients」に掲載された。
加工食品版のNPM「NPM-PFJ」は、オーストラリアで開発されたヘルススター・レイティング(HSR)をベースとし、日本食品表示基準の栄養成分表示の考え方に則り、基準値を改訂。また、栄養成分表示では区分のない栄養素単位については、個別に計算された。それにより、エネルギー、飽和脂肪酸、糖質、食塩、たんぱく質、食物繊維の基準値を定め、fvnl(果物、野菜、ナッツ類、ココナッツを含む豆類、ハーブ、菌類、種子、藻類)はHSRを踏襲した。スコアリングでは、線形加点の領域ではHSRのアプローチに従い、加重平均を用いてHSR値に調整された。
料理版のNPM「NPM-MJ」も、同様にHSRをベースとし、日本人の食事摂取基準値や「健康日本21(第3次)」を基に基準値を改訂。また料理の評価では、厚生労働省と農林水産省が発行している「日本バランスガイド」の盛付(SV)早見表を基に、主食、副菜、主菜のデータを活用した。それにより、エネルギー、飽和脂肪酸、糖質、食塩、たんぱく質、食物繊維、fvnlのスコアリングを手法を開発した。加工食品が常食に占める割合が低い日本では、料理版のNPMが必要だと言われてきたが、ついに世界初の公的機関策定の料理版NPMが誕生した。
栄養プロファイリング・モデルの活用は、機関投資家による企業の栄養評価「ATNI」でも重視されている。これまで日本では、公的機関による栄養プロファイリング・モデル(NPM)がなかったため、日本企業は日本の食文化に合わせた準拠基準値がなく、欧米企業と比べ、栄養マネジメントレベルが低いという評価を受けることが多かった。今回、国立健康・栄養研究所がNPMの初版を策定したことは、大きな前進と言える。
【参考】【国際】栄養アクセス・インデックスATNIの2021年ランキング、ネスレが首位。明治は12位タイ(2021年7月2日)
【参考】【国際】東京栄養サミット、N4G投資家宣言やIFBA減塩コミット等が表明。WBCSDも前進(2021年12月8日)
一方で、残課題もある。今回のNPM1.0版策定は、スピード感を重視したためか、NPM-PFJとNPM-MJで必ずしも分析対象の栄養成分が一致しているわけではない。また、現状の食事摂取基準についても、公衆衛生や疫学の観点から、改善が必要との声も多く、日本人が健康になるためには、食事摂取基準や摂取栄養素の議論を進化させていく必要もある。これらを踏まえた改善は、今後のNPMの改訂の中で議論されていくことが期待される。
【参照ページ】Development of a Nutrient Profile Model for Dishes in Japan Version 1.0: A New Step towards Addressing Public Health Nutrition Challenges
【参照ページ】Development of a Nutrient Profiling Model for Processed Foods in Japan
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