国際的な携帯電話通信業界団体GSMアソシエーション(GSMA)は11月25日、世界のデジタルトランスフォーメーション(DX)への投資状況について分析した報告書を発表した。調査対象の60%の企業が、コスト関連の目標よりも、顧客体験、企業成長や競争力強化への投資を優先していた。
同報告書は、世界21カ国、10の産業、4,200社のDXの投資状況について分析したもの。デジタル技術への投資は、今後6年間で大幅に増加する見込みであり、2024年から2026年までに企業収益の9%を割り当て、2027年から2030年までには11%増加する計画だとした。
調査対象の85%は、DXの成功には5Gネットワークとコネクティビティが重要だと回答し、約50%は極めて重要だと回答。DXの予算のうち、21%をコネクティビティ、13%を5Gを含むモバイル、8%をWifiネットワーク等の固定回線に費やすとした。
企業が最も重視する5Gの機能は、セキュリティが57%、コネクティビティが52%。2030年までの5Gへの投資額は、自動車、運輸、物流、倉庫等のモビリティが重要な役割を占めるセクターで増加し、4Gへの投資額の2.5倍となるとのこと。
また、AIとIoTの導入も加速。AIへの投資額は企業のDX予算のうち14%を占める。AIの導入目的は、顧客体験の向上、セキュリティプロトコルの強化、従業員の生産性向上等。特に生成AIは、90%の企業が導入していると回答。企業のデジタル戦略において重要性が増しているが、高度な活用方法を実現できているのは33%にとどまり、発展の可能性が期待されている。
IoTの導入では、5Gを活用する等の高度な活用に移行している。拡張性とセキュリティが強化されたeSIMを活用することに関心が高く、2030年までにIoT市場の42%をeSIMが占めると予想した。
企業がDXの取り組みを進めるためには、コストを抑えつつ幅広い技術を取り入れ推進する必要がある。そのため、大規模なコンピューティングやストレージを拡張することができるハイパースケーラーや通信ネットワーク企業、機器ベンダー等のフルスタックのソリューションを提供するゼネラリストサプライヤーが好まれる傾向にある。
10のセクター別の調査では、各セクター毎に取り組みの優先順位は異なる結果となった。主な結果は、
- 金融:92%の企業が生成AIを導入。今後の方針は、AIの採用拡大とDXへの支出拡大。
- メディア・エンターテイメント:65%の企業がDXの推進は収益拡大のために極めて重要だと回答。91%が生成AIを使用開始。
- エネルギー:51%の企業がクラウド技術を高度に活用しており、全セクターの中で最も高い割合。37%がコスト削減のため2026年までに生成AIの導入を優先し、長期的には予算の16%をAIに割り当てる見込み。
- 運輸・物流・倉庫:AI技術を携帯電話事業者(MNO)と連携して活用。36%がIoTを高度に活用していた。
- ヘルスケア:予算の14%をAI活用に割り当てており、41%の企業が上位5つの重要な投資分野としてサイバーセキュリティを挙げた。
- 自動車及びモビリティ:54%の企業がDXには5Gが極めて重要だと回答し、全セクターの中で最も高い割合だった。
- 小売:63%の企業が売上拡大のためにDXが極めて重要だと回答。87%の企業が生成AIを導入しており、34%が高度な活用を実施。
- 公共事業:収益の10/1%をDXに割り当てて推進。
- 農林水産業:全セクターの中で最もDXへの取り組みが遅い。IoT、AI、5G等の分野で改善の余地あり。
【参照ページ】Cybersecurity and Revenue Growth are Driving Enterprise Digital Transformation, reveals GSMA Intelligence Research
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