
コンサルティング世界大手米ベイン&カンパニーは7月8日、アパレル・ラグジュアリー業界でのカーボンニュートラル化に関する新たな報告書を発表した。
同報告書では、最も効果的なカーボンニュートラル化のパスウェイは、環境負荷の削減とビジネス価値の向上を同時に実現できる施策にあると強調。カーボンニュートラル化を単独で行うのではなく、調達、サプライチェーン、在庫管理、製品戦略に組み込まれたビジネス戦略として扱うことの重要性を訴えた。
アパレル業界の温室効果ガス排出量は世界全体の2%を占めるが、同業界の市場価値全体のうち2030年の目標達成に向け軌道に乗っているのは11%にとどまる。同報告書では、限界削減コストカーブ(MACC)を活用し、温室効果ガス排出量の削減に有効な対策と投資収益率(ROI)をアパレル業界、ラグジュアリー業界の2つに分けて分析した。
アパレル業界では、「過剰生産の削減」と「Eコマースの返品削減」の2つが有効と評価。AIによる需要予測の改善と、サイズ・スタイル・カラーの適切な製造により販売率を向上させることでバリューチェーン全体の廃棄物と返品を削減できるとした。
(出所)ベイン&カンパニー
供給側では、再生素材への移行は重要な手段の1つだが、サプライヤーの製造方法を低炭素型に移行するために支援することのほうが大きな機会になると強調。具体的には、長期契約と数量保証、石炭が産業用エネルギーの主流となっている東南アジア等でのクリーンな電源への移行等を挙げた。
ラグジュアリー業界では、製品は長期間使用されることを前提に設計されるため、長期的に資源効率の高いビジネスモデルではあるが、「過剰生産の削減」と「リセールの拡大」が重要な施策とした。
(出所)ベイン&カンパニー
過剰生産の削減では、ラグジュアリー業界の販売率は平均約60%のため約40%が定価での在庫となる。これは高い粗利益率を背景に、在庫切れや潜在的な売上機会の損失を回避するためのコストとして過剰生産を受け入れることが長年の業界慣習となっているとも指摘した。
対策として、AIを活用し在庫効率を向上させることを提案。約60%のファッションブランドで、AIを活用した販売予測が既に導入されているか、導入テストを実施。同時に約半数のブランドがAIを活用して在庫管理を正確に実施している。加えて、必要なものだけを生産するビジネスモデルとして、オーダーメイドやメイド・トゥ・メジャーのアプローチの試行が開始されているとした。
リセールの拡大では、2つの主要な課題に言及。まず、リセール販売の大部分がVintedやeBay等の第三者プラットフォームで行われており収益性が低い。2つ目は、リセールが新品の生産・販売を代替しない限り、排出量削減効果が得られないということ。これらの課題により、現在リセールはほとんどのブランドにとって負のROIとなっている。
この状況を打開するため、顧客への生涯価値提供と温室効果ガス排出量削減の両方を推進する収益性の高いブランド所有のリセールチャネルの所有を提案。具体的には、ブランド独自の買い戻しスキームやリセールプラットフォームの展開、リセールをコアビジネスに変化させるためのパートナーシップを通じたリセールチャネルの所有を挙げた。
また、EUのデジタル製品パスポート(DPP)の導入により、ワンクリックでのリセールボタンやブランドによる自動買い戻し等の機能・ツールが登場することで、リセール市場に対する先行者利益を得やすくなるとした。
【参照ページ】Decarbonizing fashion and luxury require action where value and impact intersect, and AI could play a key role
【参照ページ】Decarbonizing Fashion: How to Align Impact with Business Value
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