
国連気候変動枠組条約第29回バクー締約国会議(COP29)期間中に、英国、アラブ首長国連邦(UAE)、ブラジルの3カ国が2035年の国別削減目標を提出した。各国はパリ協定に基づき2025年2月までに2035年国別削減目標を国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局に提出する(第1回ストックテイク)義務を負っている。
国連気候変動枠組条約第26回グラスゴー締約国会議(COP26)議長国の英国政府は11月12日、2035年までに温室効果ガス排出量を1990年比81%削減する目標を提出した。英国政府は2030年目標を1990年比43%減としており、2030年から2035年まででさらに大幅な削減を実現しにいくことになる。
英政府は今回、同目標は、英国の第6次カーボンバジェットに沿ったものと説明。気候変動資金を5倍以上に増やし、石炭を7倍のスピードで廃止し、森林の損失を4倍のスピードで削減する必要があると説明した。
英国では10月1日に、1967年に運転を開始した同国内最後の石炭火力発電所「ラットクリフ・オン・ソアー石炭火力発電所」を正式に廃止し、発明家トーマス・エジソンによって産業革命期の1882年にロンドンで建設されたホルボーン・バイオダクト石炭火力発電所以来142年続いてきた石炭火力発電時代に終止符を打っている。英国では、石炭火力発電の比率は2012年39%から2022年には2%へと大幅に減っていた。
国連気候変動枠組条約第28回ドバイ締約国会議(COP28)議長国アラブ首長国連邦(UAE)は11月6日、2035年までにLULUFを含む温室効果ガス排出量を2019年比47%削減する目標を提出した。このためUAEは、2019年の196.3Mtから2035年には103.5Mtへと温室効果ガス排出量を削減する。セクター別目標は、不動産で79%減、農業で39%減、廃棄物で37%減、工業で27%減、輸送で20%減。
UAEのNDCはすでに複数回改訂されており、最初の設定は2021年で、2014年時点で0.2%だった再生可能エネルギー割合を2021年までに24%にする目標のみを掲げていた。2022年には、2030年までにBAUシナリオと比べて31%減を目標として設定。続いて2023年には、LULUFを除く温室効果ガス排出量を2019年の225Mtから2030年BAU301Mtに対し、182Mtまで大幅に削減し、2019年比40%減を目標として提出していた。今回の2035年目標では、ベースラインをBAUから2019年基準年へと切り替えた形。
2025年の国連気候変動枠組条約第30回ベニン締約国会議(COP30)議長国となるブラジル政府は11月13日、2035年までに温室効果ガス排出量を2005年比で59%から67%削減する目標を提出した。英国政府は2030年目標を2005年比43%減としていた。
またメキシコ政府は、G20諸国の中で、唯一長期的なカーボンニュートラル達成年目標を示していなかったが、COP29の中で、2050年までにカーボンニュートラルを達成することを宣言。これによりG20諸国全てでカーボンニュートラル目標が出揃った。
さらに、今回のCOP29では、EU、カナダ、メキシコ、ノルウェー、スイスが、パリ協定が求める世界全体の気温上昇幅1.5℃の制限に合致するよう、「排出量の大幅削減」を定めた新たな気候変動計画を提出することにコミットした。
【参照ページ】UK shows international leadership in tackling climate crisis
【参照ページ】The United Arab Emirates’ Third Nationally Determined Contribution (NDC 3.0)
【参照ページ】Brazil presents its new climate target aligned with Mission 1.5ºC
【参照ページ】BRAZIL’S NDC National determination to contribute and transform
【参照ページ】Brazil's New NDC for 2035
【参照ページ】Breakthrough in Baku delivers $1.3tn “Baku Finance Goal”
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