
EU上院の役割を担うEU加盟国閣僚級のEU理事会とEU下院の役割を担う欧州議会は5月21日、非常事態時に権利者の許可なく知的財産権の使用を可能とするEU規則案で政治手合意に達した。今後、双方での立法手続に入る。
同EU規則は、知的財産権の「強制ライセンス」を定めるもの。強制ライセンスとは、非常事態時に重要製品のEU域内での供給確保を目的とし、権利者の許可なく知的財産権(特許等)を使用する法的権限を創出するもの。新型コロナウイルス・パンデミック時に医薬品等の確保が課題となり、欧州委員会が2023年7月に「強制ライセンス」の確立を提案していた。
同EU規則では、パンデミックや自然災害等の非常事態時に、まずは権利者と潜在的な利用者との間の自発的な合意を優先することを明確化。但し、際限のない交渉を避けるため、自主的な合意が合理的な期間内に締結されない場合に、強制ライセンス制度が発動される仕組みとする。すでに一部のEU加盟国では、強制ライセンスの仕組みを確立しているが、同EU規則により、EU域内全域での強制ライセンス制度を整備した。
但し、同EU規則では、公衆衛生に関する非常事態を想定し、ガス供給不足、半導体供給不足、武器に関しては、強制ライセンス制度が適用されないことも明確にする。
一方、ベルギー、オランダ、ルクセンブルク、スウェーデン、フィンランド、ラトビア、エストニア、リトアニアの8カ国は5月22日、国防や安全保障、気候変動等の自然災害に関する危機準備の制度強化を求める共同声明を発表している。主にロシアを念頭に置いていると思われる。
同共同声明は、軍事、ハイブリッド、テロリスト、犯罪集団や、外国による情報操作・干渉に加え、自然災害や人災による破壊を想定し、単一情報分析能力 (SIAC)や緊急対応調整センター (ERCC)の設置、重要インフラの保護等についてEUレベルでの政策強化を求めている。
【参照ページ】Crisis preparedness: Council and Parliament strike deal on last-resort patent licensing
【参照ページ】Joint Statement European Coalition on Civil Preparedness and Resilience
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