
農林水産省は8月20日、8月末までに消費者に提供されることを前提に実施してきた備蓄米の随意契約について、引渡し後1か月以内に販売することを目指すことを要件とし、実質的に8月末までの提供期限を一部延期する措置を決めた。
【参考】【日本】政府、コメ価格高騰で原因総括。需要と供給の双方で想定外発生。コメ増産へ(2025年8月9日)
同省は5月26日から備蓄米の随意契約での放出を開始。当初は大手小売事業者のみが対象だったが、途中から中小小売業者、精米能力を有する米穀小売店、中食・外食(給食等)事業者も追加され、50万tの放出を決定。合計で32万tの契約が締結済みだが、そのうち4万tがキャンセルとなり、実際の契約は28万tとなり、そのうち10万tの引き渡しが完了できていない。そのため提供期限を一部延期することとなった。
入札と随意契約の双方による在庫米の売り渡しにより、2025年3月時点で96万tあった在庫は、仮に全ての入札分と随意契約分が売り渡されたとすると、在庫は15万tにまで縮減する。今後、時宜を見て、再び在庫を積み上げていくことになる。
(出所)MAFF
在庫米放出による市場価格への介入効果では、2024年産米の価格は、2025年5月に27,649円/60kgでピークアウトし、8月時点では26,918円まで下がっている。入札により売り渡した備蓄米を含めた取引価格では26,185円となった。だが2024年時の15,000円台と比べると、非常に高い水準にある。
(出所)MAFF
価格が上昇している背景には、燃料や肥料の価格高騰により、農協が米を集荷した際に前払いとして農家に支払う「概算金」が上昇していることも関係している。農業資材価格は、2024年平均は2020年時と比べ、燃料で30%増、肥料で37.1%増。この影響を受け、概算金は前年度から40%から50%引き上げられていた。
(出所)MAFF
これに加え、農林水産省の想定以上に米の需要が膨らんだ上に気候変動の影響を受け収穫量が減り需給が逼迫し、それに伴い、米の値上がりにより早期に米を確保しようとした流通事業者による獲得競争を起因としてバブルが発生したという2つの追加要因もあった。
【参考】【日本】政府、コメ価格高騰で原因総括。需要と供給の双方で想定外発生。コメ増産へ(2025年8月9日)
8月に入り、2025年産米についても各地の農協が概算金の金額を設定し始めているが、すでに前年比1.7倍の引上げを決めているところもある。背景には、燃料・肥料の価格高騰に加え、農業生産の安定化のために農家の所得向上を狙う動きもある。獲得競争によるバブルが発生しなければ、米の店頭価格は3,000円台後半にとどまりそうだが、バブルが発生すれば再び4,000円台以上ということもありうる。
農林水産省は、今年の課題の一つとなった需給逼迫の解消のため、今後の生産拡大による価格抑制を模索している。目下、米の生産者に対し、来年、5年後、10年後の米の生産意向に関するアンケート調査を実施しており、8月31日までの回答を要請中。同アンケートの結果に注目が集まる。
【参照ページ】随意契約による政府備蓄米の売渡しについて
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