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【アメリカ】アップルはどのようにサステナビリティ先進企業になったのか?

今回ご紹介するのは、 アップルの現・環境イニシアティブ担当副社長であり、2009年から2013年までEPA(米国環境保護庁)長官を務めたことでも有名なLisa Jackson氏が、今年の5月に開催されたFortune誌主催のイベントに出演した際の貴重なトーク映像だ。

インタビューの中でJackson氏は、同氏がEPA長官を辞職してアップルに転職したときのエピソードから、これまでアップルがサステナビリティ向上に向けて歩んできた取り組みとその成果、今後の課題などについて語った。

「実は、元々アップル商品の愛用者ではなかった」と告白したJackson氏は、自身がEPAの長官を務めていた頃はアップルに対してあまり良い印象を抱いていなかったという。同氏によれば、「アップルは市場の中ではとても存在感の大きい会社だったが、サステナビリティに対して高い意識を持っているとは言えなかった。アップルが最も優先していたのは製品だった」という。

そんな同氏がアップルへの転職を決意したきっかけは、アップルの現CEO、Tim Cook氏からの一本の電話だったという。もともと二人が出会ったのはEPAが主催したイベントの会場で、Tim Cook氏もその時はまだアップルのCEOではなかった。しかし二人はその後もコンタクトは取り続けており、Jackson氏がEPAを離れることを告知したあと、Tim Cook氏から誘いの電話がかかってきたのだという。

Tim Cook氏はJackson氏に対し、「我々がいつも考えているのは、いかに新しい製品によって顧客を驚かせ、喜ばせるかということだ。しかし、我々の製品開発におけるイノベーションには、もう一つの意味がある。我々は、クリーンエネルギー、エネルギーの効率化、気候変動、資源効率化など、自分たちがしていることについて話す責任があり、またそうすべきなのだ」と語り、アップルが目指す「イノベーション」には、製品だけではなくサステナビリティにおけるイノベーションも含まれていると伝えたのだという。そしてこの言葉に惹かれたJackson氏は、アップルへの入社を決めた。2013年3月のことだ。

今やJackson氏およびTim Cook氏の影響力と努力によってアップルはサステナビリティの分野でも著しい成長を遂げており、かつてはアップルを批判していた Green Peace も、今では同社を「模範企業」と賞賛するまでになった。

Jackson氏は、アップルのサステナビリティにおける進歩を裏付けるデータとして、全てのデータセンターは100%再生可能エネルギーを使用していると発表した。例えデータセンターの話だとしても、アップルの事業規模を考えればこれはとても大きなことなのだと同氏は強調する。また、アップルの全施設 のうち94%が再生可能エネルギーを使用しているという。

今後の課題の一つとしてGreen Peace およびJackson氏の両者が挙げているのは、中国にあるアップルのサプライヤーの環境汚染を減らすことだ。この問題への対策の一つとしてアップルは、自社のカーボン・フットプリントをWeb上に掲載しており、製品の資源を採鉱する段階から消費者が商品を使用する段階、そして使い終わった商品がリサイクルされるまでの全ての段階を含むカーボン・フットプリントを公開している。

Jackson氏は、消費者への情報公開は、アップルの「透明性」を向上させ、会社に対する信頼を高めるだけではなく、自社の課題を明確に把握するためのイノベーションになると考えているとのことだ。

また、インタビューの最後に観客からの質問で、アップルの製品単位のフットプリントは削減されているものの、それ以上により多くの商品が消費されているため、結果としてアップル全体としてのフットプリントが増加しているという課題が挙げられた。

これに対し、Jackson氏は、製品の生産を削減することは解決策ではないと断言した。それと同時に、アップルは7年前に発売した商品 の80%を回収していることを発表し、今後もリサイクルの効率性を上げることが目標だと語った。

アップルは先週、最新の2014 Environmental Responsibility Reportをリリースしたばかりだ。

同報告書によれば、アップルの2013年の温室効果ガス排出量は2012年と比較して9%増加しているが、これは前年度以前の排出量が実際より少なく算出されていたためで、新たに導入した計算手法で再計算すると、実際には2013年は前年比で3%の削減を達成しているという。

アップルが温室効果ガス排出量を前年比ベースで削減したのは2009年の報告開始以降、今回が初めてのことになる。上記インタビューにある通り、Lisa Jackson氏とTim Cook氏の強力タッグのもと、サプライチェーンも一丸となりサステナビリティを推進した結果であろう。

また、アップルは再生可能エネルギーに注力していることでも有名だが、同報告書によれば、既に米国内のアップルストア145店舗およびオーストラリアの全てのセレクトショップにおいて100%再生可能エネルギーによる運営を実現しているという。

今や時価総額(2014年6月末時点で5,600億米ドル)では世界No,1企業となったアップル。同社がグローバル市場に与えている影響は計り知れないほど大きいが、それは同時に環境・サステナビリティ分野においても同社がもたらすインパクトは非常に大きいことを意味する。

Tim Cook氏がCEOに就任して以降、同社は急速にサステナビリティ先進企業へと変貌を遂げつつあり、2014年に入ってからもその動きは止まらないが、その陰にはLisa Jackson氏の同社への多大な貢献がある。革新的な新製品はもちろんだが、サステナビリティ分野においても次はどのようなイノベーションをもたらしてくれるのか。ぜひ今後も同社の動きに注目していきたい。

【企業サイト】Apple
【レポートダウンロード】2014 Environmental Responsibility Report

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