米国では、政府主導による環境政策プログラムがエネルギー効率化に向けた取り組みを後押ししている。米国環境保護庁(以下、EPA)は先日、政府が展開しているENERGY STARプログラム(エネルギー効率が高く、環境に配慮された建築物を認定するプログラム)の認定済建物数上位都市ランキング、2015 ENERGY STAR TOP CITIESを公開した。今年のランキングではワシントンD.C.が認定済み建物数480棟でロサンゼルスを抜き、初めて首位に輝いた。次いでアトランタ、ニューヨーク、サンフランシスコといった都市が名を連ねている。
同ランキングを受けて、環境メディア大手のGreenBizは先日、"D.C. overtakes L.A. for building energy efficiency crown"という記事の中で見事に首位を獲得したワシントンD.C.の取り組みを紹介している。
同記事によると、ワシントンD.C.による首位獲得の大きな要因となったのは行政主導によるイニシアチブだという。ワシントンD.C. 特別区はLEED認証プロジェクトが最も多い地区の一つでもあるが、エネルギー節約、効率化を推進するための革新的な政策やプログラムを推進する中心地となっている。環境に配慮した建設規則やエネルギー規制などを含む同地区のSustainable DC planや、DC Sustainable Energy Utility、DC Smarter Business Challengeといった様々な行政主導の取り組みが実行され、それらが功を奏したとのことだ。
またGreen Bizは、2011年に米国最大の公営住宅提供機関、米国中央政府調達局が賃貸物件の対象を可能な限りENERGY STAR認定済み建物に限定する方針を掲げたことも大きな要因の一つとして挙げている。さらに、現在では米国中央政府調達局に限らず多くの民間不動産企業がサステナビリティをビジネス戦略に組み入れており、ENERGY STARのポートフォリオマネジャーを通じて不動産のエネルギー使用状況を測定・管理しているという。米国では環境への配慮やエネルギー効率化が不動産価値を高める重要な要素と認識されているのだ。
実際に、エネルギー効率化は大幅なコスト削減にもつながる。ENERGY STAR認定済みのビルは通常のビルと比較して1平方フィートあたり0.50米ドル費用が少なく、消費エネルギーは半分以下におさまるとのことだ。全米ではENERGY STAR認定済みの建物が25,000棟あり、延べ34億米ドルの光熱費の節約につながっているという。
Green Bizは、ワシントンD.C.の全CO2排出量に占める建物のエネルギー利用による排出量割合は75%に上っており、ニューヨークになるとその割合は80%まで上がると指摘したうえで、都市における建物のエネルギー効率化の重要視を訴えている。
ワシントンD.C.の事例に見られるように、米国では政府や地方自治体などが積極的にサステナビリティ・環境に関する政策的なインセンティブを用意することで、実際に事業を行う企業にとって環境面とビジネス面のメリットが一致する仕組みを作り出している。日本でもLEED認証のようなグリーン・ビルディングが広がり始めているが、政府と地方行政、民間企業との連携によるさらなる取り組みの推進が期待される。
【参考記事】D.C. overtakes L.A. for building energy efficiency crown
【参考サイト】2015 ENERGY STAR TOP CITIES
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