【ヨーロッパ】1億5300万トンのCO2排出を左右する意思決定を迫られるEU 2015/05/28 最新ニュース

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 現行のEU排出量取引制度における排出権の供給過剰の解消に向け、EU各国の政策立案者らはMSR(Market Stability Reserve、市場安定化リザーブ)の導入に向けた最終決定段階に入っている。しかしながら、今後10年間の温室効果ガス排出量に大いに影響を与えうるMSRの開始時期についての意見が加盟各国間で分かれているのが現状だ。

 市場安定化リザーブとは、余剰排出権の一定量をリザーブ(積み立て枠)に出し入れすることで排出権価格を安定させるメカニズムのことを指す。エネルギー節約や低炭素技術への投資へのインセンティブ低下の要因となる排出権価格の低下を防ぐための施策として検討されている。

 開始時期いかんによりカンボジアの年間エネルギー利用量、または石炭火力発電所50ヶ所分のCO2排出量に相当する1億5300万トンのCO2排出を回避できるかどうかが決まるとあり、政策立案者らは難しい決定を迫られている。欧州議会は2018年という開始時期で合意している一方で、欧州理事会の各国首脳は2021年で一致している。対する妥協案として、ラトビアが2019年を提言している。

 Thomson Reutersのシニアアナリストを務めるEmil Dimantchev氏は「意見一致に苦戦している理事会が動きを速めない限り、意思決定には至らない。一方で、ポーランドをはじめとする東欧諸国が自国の重工業への打撃を理由に消極的な姿勢を示しており、さらに議論が過熱することが予想される。ただ、東欧諸国は気候変動対策を効率化することで享受できる中長期的な恩恵を念頭に置いていない。排出量取引制度を2021年よりも前倒しで改革すれば、炭素価格が上昇することからEU各国は費用対効果の高い形で排出量削減を実現できる」と語る。

 EU排出量取引制度はEUの気候変動政策の要であり、世界最大の炭素市場でもある。産業界に対してエネルギーの節約と低炭素技術への投資を促すことを目的とする同制度によりCO2排出量の削減は一定の効果をあげてきたものの、現行の低すぎる炭素価格が低炭素技術へのさらなる投資を阻んでいることが指摘されている。排出量取引制度において世界をリードするEUの決定によるインパクトは、EU内のCO2排出量削減だけにとどまらない。最終的な判断の行方に、世界からの注目が集まる。

【参照リリース】EU to take carbon market decision the size of Cambodia
【団体サイト】Responding to Climate Change

株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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