英国イースト・アングリア大学(UEA)の研究チームらは6月10日、持続可能なパーム油を使用した製品への価格プレミアムが、熱帯雨林と生物多様性の破壊を食い止める解決策となるとする研究調査結果を発表した。持続可能なパーム油生産のための森林や土地の保護活動は、企業にとってコストではなく利益となりうることを研究により示した。
現在パーム油はバターの安価な代替品として食品業界で幅広く使用されているが、パーム油の栽培に伴う森林伐採は、東南アジアを中心に生物多様性破壊や気候変動など深刻な問題を引き起こしている。そこで、UEAが主導する研究チームはロンドン動物学会やバーモント大学、WWFらと共同でパーム油栽培による熱帯雨林破壊が深刻化しているインドネシアのスマトラ島にて生物多様性に関する調査を実施した。企業の財務記録も参照し、土地の保護が生物多様性や企業のコストに与える影響についても検証した。
同調査の結果、保護地域の場所が生物多様性と企業の利益の双方に大きな影響を及ぼしていることが分かった。そこで研究チームはこの結果をベースに、どの地域であれば生物多様性の推進と企業のコスト削減とのバランスが最もとれるかを調査した。さらに、チームは広範なエリアの土地を保護している企業からデータを入手し、企業が持続可能なパーム油由来の製品に設定できる可能性がある価格プレミアムについても分析した。その結果、企業の土地の保護にかかるコストよりも、高価格帯志向の消費者が持続可能なパーム油に支払うと想定される価格プレミアムの方が高いことが分かった。
UEA環境科学部のIan Bateman教授は「持続可能な形で栽培されたパーム油に対して多くを支払ってもよいという消費者の意思は、民間の生産者が保護活動に取り組むインセンティブとなる可能性を持っている。また、これは絶滅危惧種の保護にもつながるだろう。今回の調査結果全てをまとめることで、我々は市場の力を活用し、コスト効率が高く、利益を生み出すことさえできる保護地域を特定することができる」と語る。また、同氏は「我々の研究は、個人の土地利用者を動機づけさせることの重要性を示している。重要なのは、この方法は、政府の介入や国際合意を必要とせず、腐敗の問題を割けることができるということだ」と付け加えた。
森林を保護し、持続可能なパーム油を生産したほうが利益につながるという認識をパーム油生産業者らが共有することができれば、自然とパーム油栽培に伴う森林破壊は減っていくはずだ。今回の調査結果をもとに実際に現地企業らの取り組みが変わっていくことを期待したい。
【参照リリース】Higher prices for sustainable palm oil could save endangered species
【大学サイト】University of East Anglia
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