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【中国】テンセント、2013-2014年版の「CSR報告書」を発表。各サービスのインパクトを開示。 2015/07/26 最新ニュース

wechat

 世界的なインターネット大手、中国のテンセントは6月26日、2013〜2014年版のCSR報告書を発表した。同社は2年おきにCSR報告書を発表しており、今回が4回目。CSR報告書のテーマは「For the connection」。全社の経営スローガンである「全てを繋げる」に基づき、過去2年での達成成果をまとめた。テンセントは、メッセージアプリである「Wechat(微信)」、同社の歴史を築いてきた初期のチャットサービス「QQ」、SNSの「QQ空間」、セキュリティアプリの「テンセントセキュリティ」などで世界的に有名。とりわけ、Wechatは世界的に競合であるLINEを上回る6億人のユーザーがいることで知られている。香港証券取引所に上場しており時価総額は約23兆円で、日本を代表する通信企業NTTの時価総額(約10兆円)のおよそ2.3倍だ。

 同社のCSR報告書の特徴は、非日常的な社会貢献にページをほとんど割かず、各サービスが社会に与えた価値の内容や未来像を示している点にある。特に達成事項としては、インターネットサービス事業者として、同社のサービスがどれだけ社会の役に立ってきているのかに大きなフォーカスが当てられている。同社はスマートフォンが急速に浸透する巨大なインターネット市場で急成長してきた。オンラインのコミュニケーションプラットフォームだけでなく、決済機能もサービスラインナップに持ち、与える社会的インパクトは大きい。最近では、人と人をつなげるだけでなく、人とサービス、人と施設の分野にも注力している。この事業ドメインを背景として、テンセントの社会的責任の内容も多様なものとなってきている。

 Wechatのページでは、アンケート調査を用い、回答者の86.1%がWechatを通じて友達と連絡する頻度が増えた、また57.3%がWechatを通じて新たな友達ができたり、昔の友達と久々に連絡がとれたと回答したという。さらに社会的インフラともなってきているWechatは、交通機関による交通情報案内、高校での生徒連絡網、広州や深圳地域では地方自治体との連絡・納税決済機能としても活用されている。その上、20,000軒以上のホテル予約、コンビニで使えるクーポン提供、映画館での電子決済、自動販売機での電子決済などにも活用されており、日本でのLINEとSUICAを足した以上のサービスカバー領域とも言える。省政府や市政府アカウントからの情報発信は合計40,942件。警察当局も公式アカウントから情報発信しており、武漢警察ではWechatでの罰金支払サービスを活用し、節約労働量は警察官300人分に及ぶという。医療機関もWechatを用いた情報発信を展開、中国での三次救急指定病院に相当する三級甲等医院が特に主要な発信者となっており、地域医療機関においては1,200以上の診療所が約300万人の患者に遠隔診療を施した。個人タクシードライバー配車機能を通じて、96.5%のタクシードライバーが収入がアップし、そのうち30%以上の収入増となったドライバーは39.5%もいる。それにより、ドライバーの雇用は12.1%も増加したという。

 Wechatより以前から同社がサービス提供しているチャットサービスのQQは、PC端末からのユーザーが中心と使い方が異なるが、アカウント数は8億人に達し、2014年4月11日には2億人が同時アクセス状態を行うという歴史的な瞬間も迎えた。SNSサービスのQQ空間では、QQ空間を活用した社会貢献活動がクローズアップされた。高齢化が急速に進む中国では独居老人問題が深刻化しており、特に防寒衣がないことによる凍死が急増している。QQ空間では、地方の独居老人に防寒衣を贈るマッチング拠出寄付キャンペーンを行い、合計300万元(約6,000億円)の寄付が集まり、15,000人の独居老人に約4,000円のコートが届けられた。「テンセントセキュリティ」サービスの項目では、同社が独自開発したアンチウィルスエンジン「TAV」とハッカーからの攻撃を防ぐ「イージスシステム」が取り上げられてた。中国国内ではサイバー攻撃が日常的に横行しており、「TAV」は中国国内でのインストール量として同国最大級の実績を誇り、「イージスシステム」では2014年1年間で24,565回の大型攻撃を防いだ。攻撃時間は合計7,571時間、流量は1,825京に及んだ。

 また、同社付属の騰訊公益慈善基金会が実施しているオンライン寄付プラットフォームには、2014年には約500万人から9,995万元(約20億円)の寄付も集まった。その他、従来中国では軽視されてきた知的財産権保護への取組、企業内大学でのトレーニング機会の提供、環境分野では省電力サーバー、水系自由冷却システム、風系自由空気交換技術などを導入し、同社のデータセンター(騰訊IDC)で2億kwhの省エネに成功している。今後に向けては、既存サービスの拡大や新たなインターネットサービスの投入だけでなく、最近設立した銀行「微衆銀行」(Webank)の事業拡大にも力を入れていく模様。

 テンセントのサービスは、既に中国での大きな社会インフラとなってきている。提供サービスが与える社会・環境インパクトを積極的に測定していこうという姿勢は評価できる。だが、事業が与える負の側面か課題認識についての記述はなく、その点が今後の同社のサステナビリティ戦略と情報開示に期待していきたい点だ。

【CSRレポート】Tencent “For the Connection”

株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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